貨物海上保険の付保依頼

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貨物海上保険の付保依頼とは

貨物海上保険の付保依頼とは、輸出入貨物や国内外の輸送貨物について、輸送中の事故に備えるため、荷主又はフォワーダーが保険会社又は保険代理店へ貨物保険の手配を依頼する実務です。

付保依頼は、単に「保険を付けてください」と連絡するだけでは完了しません。被保険者、貨物内容、輸送区間、輸送方法、保険金額、建値、希望する保険条件、船積日、保険開始希望日その他の情報を整理し、保険会社が引受判断できる状態で提出する必要があります。

また、付保依頼を送信したこと、保険代理店が依頼を受け付けたこと、保険会社が引受を承認したこと及び保険証券が発行されたことは、それぞれ異なる段階です。依頼を送信しただけで保険契約が確定したと判断してはいけません。

貨物内容、保険金額、輸送区間又は付保時期に不明点がある場合、保険会社から追加資料の提出、個別引受照会、条件変更又は引受見合わせを求められることがあります。

本記事は、付保依頼の入口実務を整理する総合ハブ記事です。建値と保険金額、貨物内容による引受可否、船積後付保及び個別の特殊貨物条件については、それぞれの専門記事で詳しく確認します。

この記事で扱う範囲

項目 この記事で扱う内容 別に確認すべき内容
貨物海上保険の付保依頼 保険手配を依頼する際の必要情報、確認順序、提出資料及び完了確認を整理します。 個別保険会社の申込書、保険料率、引受権限及び証券発行手続を確認します。
被保険者名 誰の利益を保険で守るのか、証券名義を誰にするのかを確認します。 被保険利益、売買契約、貨物所有権、保険金請求権及び名義変更を個別に確認します。
貨物内容 貨物名、性質、状態及び特殊貨物該当性を入口段階で確認します。 「貨物内容と引受可否」で中古品、危険品、温度管理貨物、高額貨物等を確認します。
建値と保険金額 FOB、CFR、CIF等を確認し、保険金額設定に必要な資料をそろえます。 建値別のInsurable Value、Sum Insured及びrequired insurance percentageを別記事で確認します。
輸送区間 保険開始地、保険終了地、積替え、保管及び内陸輸送の有無を確認します。 Transit Clause、Warehouse to Warehouse、保険終期及び長期保管を確認します。
保険条件 ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)及び追加危険の希望を整理します。 実際の約款、免責、戦争・ストライキ危険及び特別約款を確認します。
引受判断 依頼内容が通常引受、条件付き引受又は個別照会へ進むことを整理します。 「貨物海上保険の引受判断」で保険会社側の判断フローを確認します。
船積後付保 輸送開始後の依頼を通常の船積前依頼と区別します。 「船積後付保と引受制限」で予定保険、Late Declaration、既知損害及び遡及担保を確認します。
保険証券 依頼内容と証券記載を照合する基本を整理します。 証券発行日、保険開始日、L/C条件、訂正及び再発行を確認します。
フォワーダーの関与 情報収集、付保依頼、引受照会、回答共有及び記録保存の範囲を整理します。 保険募集権限、受託範囲及びフォワーダー賠償責任保険を確認します。
事故発生後 付保依頼後に事故が判明した場合の初動と既存保険確認を整理します。 保険金請求、求償、サーベイ、損害通知及び責任関係を個別に確認します。
信用状取引 保険書類の条件を船積前に確認する必要性を整理します。 L/Cの書類条件、保険金額、通貨、日付及び銀行審査を確認します。

関連する記事との役割分担

記事 中心となる問い 本記事で扱う入口情報 各記事で詳しく扱う内容
貨物海上保険の付保依頼 何を、誰が、いつ、どの資料で依頼するか 被保険者、貨物、区間、金額、条件及び時期 依頼手順、必要資料、受付後確認及び証券照合
貨物内容と引受可否 貨物の性質からどの引受区分へ振り分けるか 新品・中古、危険品、温度管理、高額品等 通常引受、個別確認、引受制限及び必要資料
貨物海上保険の引受判断 保険会社がどの条件で引き受けるか 依頼情報と追加照会事項 危険評価、条件付き引受、上位承認、再保険確認及び最終回答
船積後付保と引受制限 輸送開始後の依頼をどのように判断するか 船積日、依頼日、事故情報及び既存契約 予定保険、包括予定保険契約、Late Declaration、Held Covered及び遡及担保
建値と保険金額 建値からInsurable ValueとSum Insuredをどう設定するか Invoice、Incoterms、運賃、保険料及び付保割合 FOB、CFR、CIF等の金額構造、過少保険及び過大保険

付保依頼から保険証券確認までの基本フロー

段階 確認する内容 主な担当者 完了条件
1. 保険手配者の確認 売主、買主、荷主、フォワーダー又はその他の者のうち誰が保険を手配するか 荷主、営業担当、売買契約担当 保険手配責任と依頼者が明確になっています。
2. 被保険者の確認 誰の被保険利益を保険で守るか、証券名義を誰にするか 荷主、保険代理店、売買契約担当 被保険者名と住所が確定しています。
3. 貨物情報の確認 正式品名、数量、状態、用途、特殊貨物該当性 荷主、輸出者、製造者、フォワーダー 引受判断に必要な粒度で貨物が特定されています。
4. 輸送情報の確認 仕出地、仕向地、経由地、輸送方法、船名、便名、積替え及び保管 フォワーダー、NVOCC、船会社、倉庫 保険対象区間と輸送予定が確定しています。
5. 金額・建値の確認 Invoice、Incoterms、通貨、Insurable Value、Sum Insured及びrequired insurance percentage 荷主、経理、保険代理店 保険金額の根拠が説明できます。
6. 保険条件の確認 ICC条件、免責、戦争・ストライキ危険、特別約款及びL/C要求 荷主、保険代理店、銀行担当 希望条件が具体化されています。
7. 付保時期の確認 集荷日、船積日、出港日、依頼日及び保険開始希望日 荷主、フォワーダー、保険代理店 船積前依頼か船積後依頼かが判定されています。
8. 付保依頼の送信 必要情報と資料を保険会社又は保険代理店へ提出します。 荷主、フォワーダー、保険代理店 依頼内容と送信日時が記録されています。
9. 引受回答の確認 引受可否、条件、免責、追加資料、保険料及び回答有効期限 保険会社、保険代理店、荷主 正式な引受回答を取得しています。
10. 条件合意 提示条件を荷主が受け入れるかを確認します。 荷主、保険代理店 条件への同意が書面で残っています。
11. 証券発行 被保険者、貨物、金額、区間、条件、始期及び日付 保険会社、保険代理店 承認条件どおり証券又は証明書が作成されています。
12. 最終照合・保存 Invoice、B/L、L/C、引受回答及び証券を照合します。 荷主、フォワーダー、保険代理店 不一致がなく、関連資料が保存されています。

被保険者名と被保険利益の確認

付保依頼では、誰が保険料を支払うかだけでなく、誰の利益を保険で守るのかを確認する必要があります。

保険手配者、保険契約者、被保険者、Invoice上の売主・買主及びB/L上の当事者は、必ずしも同一ではありません。

そのため、「荷主名で依頼したからその会社が当然に被保険者になる」「フォワーダーが依頼したからフォワーダー名義になる」と機械的に判断してはいけません。

確認項目 確認する理由 主な確認資料 問題がある場合
保険契約者 誰が保険契約を申し込むかを確認するため 申込書、委任内容、取引記録 申込権限と保険料負担を確認します。
被保険者 誰の被保険利益を補償するかを確認するため 売買契約、Invoice、取引条件 証券名義を保険会社へ照会します。
保険手配者 誰が実務上の付保依頼を行うかを確認するため 業務委託、依頼メール、社内分担 受託範囲を明確にします。
売主・買主 危険負担と保険手配責任を確認するため 売買契約、Incoterms、Invoice 建値だけでなく個別契約を確認します。
保険金受取関係者 事故時の請求・受領手続を確認するため L/C、保険証券、担保設定資料 銀行、買主又はその他の権利者を確認します。
住所・法人名 証券記載と本人確認を正確にするため 登記情報、会社資料、Invoice 旧社名、略称又は支店名を訂正します。

被保険利益の有無及びその時点は、売買契約、危険移転、所有関係、準拠法及び適用約款によって異なります。個別案件では保険会社又は専門家へ確認します。

付保依頼で必要となる主な情報

確認項目 確認する理由 必要資料・情報 不足時の問題
被保険者名 誰の利益を保険で守るかを確認するため 会社名、住所、売買契約、Invoice 証券名義及び保険金請求時に問題となります。
貨物の正式名称 貨物の性質と引受可否を判断するため Invoice、P/L、仕様書、写真 特殊貨物を見落とす可能性があります。
新品・中古の別 既存損傷、状態及び価額を確認するため 写真、検品記録、売買契約 事故前状態と輸送損害を区別できません。
危険品情報 火災・爆発・漏洩等の危険を確認するため SDS、UN番号、Class、Packing Group 輸送受託と保険引受の双方に影響します。
温度管理情報 温度逸脱及び品質劣化の条件を確認するため 設定温度、許容幅、予冷、リーファー情報 必要な補償条件を設定できません。
Invoice金額・通貨 Insurable ValueとSum Insuredの基礎を確認するため Commercial Invoice、契約書 保険金額及び保険料が誤ります。
建値 貨物代金に含まれる費用と保険手配責任を確認するため Incoterms、売買契約、Invoice FOB・CFR等で保険金額不足が生じます。
required insurance percentage L/C又は取引条件で必要な付保割合を確認するため L/C、売買契約、社内基準 必要保険金額を満たさない可能性があります。
輸送区間 保険開始地と終了地を特定するため Booking、B/L、集荷・配送指示 事故場所が補償期間内か不明になります。
輸送方法 荷役回数、事故原因及び輸送危険を確認するため Booking、輸送計画、B/L 必要条件・特約が不足します。
船名・便名 実際の輸送手段を特定するため Booking、B/L、フライト情報 証券記載と輸送実態が一致しません。
船積日・出港日 付保時期及び保険開始を確認するため Booking、B/L、スケジュール 船積後付保の問題が生じます。
梱包 貨物に適した輸送準備かを確認するため 梱包仕様、写真、P/L 梱包不備又は条件違反が問題となります。
保管・積替え 通常輸送過程、長期保管及び集積を確認するため 経路、倉庫、保管期間 保険終期又は追加条件が不明になります。
希望する保険条件 補償範囲と荷主の要求を確認するため ICC条件、特約、L/C 希望補償と実際の契約が一致しません。

貨物内容は入口情報として確認する

付保依頼時には、貨物内容を引受判断に必要な範囲まで具体化します。ただし、本記事では個々の貨物種類に関する詳細な保険条件までは扱いません。

入口で確認する分類 最低限確認する内容 次に進む記事・照会 付保依頼時の注意点
中古品 年式、状態、既存傷、価額、輸送前写真 中古品の貨物海上保険・個別引受照会 新品として処理しません。
危険品 UN番号、Class、Packing Group、SDS、申告 危険品の貨物海上保険・危険品担当 船会社への申告だけで保険照会が完了したとは考えません。
冷凍・冷蔵貨物 設定温度、許容幅、予冷、リーファー使用 冷凍・冷蔵貨物の貨物海上保険 一般食品として依頼しません。
高額貨物 Sum Insured、価額根拠、経路、警備、集積額 高額承認・再保険確認 船積直前ではなく早期に照会します。
精密機器 仕様、動作確認、防振、防湿、梱包 個別引受照会・梱包確認 外観損傷だけを想定しません。
大型・重量貨物 重量、寸法、重心、吊り点、積付け、ラッシング 重量物照会・サーベイ 荷役計画を付保依頼と連携します。

輸送区間の伝え方

付保依頼では、港名だけでなく、実際に保険を開始したい場所と終了したい場所を明確にします。

輸送区間 付保依頼で伝える内容 確認が必要な点 詳細確認先
倉庫から港まで 集荷場所、集荷日、輸出港及び輸送手段 内陸区間を誰が付保するか 売買契約・Transit Clause
港から港まで 積港、揚港、本船及び積替え 内陸輸送が対象外となるか 保険証券・輸送契約
港から納品先まで 揚港、搬出、配送先及び国内輸送 CY・CFS搬出後の区間 Transit Clause・保険終期
倉庫から倉庫まで 出荷元、経由地、揚港、納品先及び全輸送手段 実際の開始地・終了地 Warehouse to Warehouse条件
積替えを含む輸送 積替港、回数、輸送手段変更及び待機期間 通常輸送過程内か 輸送計画・約款
一時保管を含む輸送 保管場所、理由、期間、温度及び集積額 長期保管又は輸送中断か 保険終期・保管特約

保険金額と建値は詳細計算の前提を提出する

本記事では保険金額の詳細計算を繰り返さず、付保依頼時に必要な前提情報を整理します。

確認事項 付保依頼で提出する内容 問題になりやすい点 詳細確認先
Invoice金額 金額、数量、単価及び通貨 運賃・保険料が含まれているか不明 Invoice・売買契約
Incoterms FOB、CFR、CIF、EXW、DAP、DDP等 危険移転と保険手配責任を混同する 建値と保険金額の記事
運賃 実額又は合理的な見積額 FOB・CFR基準額からの加算漏れ Freight Invoice・見積書
保険料 Insurable Value計算に必要な場合の取扱い CIF構成の計算誤り 保険代理店・計算基準
required insurance percentage 110%等の契約又はL/C上の割合 割合を一律に使用する誤り L/C・売買契約
評価額 中古品、美術品、展示品等の価額根拠 Invoiceだけでは実価額を説明できない 評価書・売買契約

保険金額の最終設定は、建値、運賃、保険料、期待利益、L/C条件及び保険会社の取扱いを確認して行います。

希望する保険条件の整理

保険条件 付保依頼時に確認すること 誤解しやすい点 実務上の対応
ICC(A) 広い補償を希望する理由と貨物・輸送への適合性 すべての損害が補償されるわけではありません。 除外条項、免責及び特約を確認します。
ICC(B) 対象となる事故類型が取引要求に合うか ICC(A)との違いを保険料だけで判断しません。 必要事故類型を確認します。
ICC(C) 限定的な補償で取引目的を満たすか 破損、盗難等の一部損害が対象外となり得ます。 対象危険を具体的に確認します。
戦争危険 航路、寄港地及びL/C要求 通常のICC条件へ自動的に含まれるとは限りません。 付帯可否、地域及び追加保険料を確認します。
ストライキ危険 ストライキ、暴動、騒擾等の要求 通常条件との関係を確認する必要があります。 特約の付帯と範囲を確認します。
温度変化条件 冷凍機故障、待機時間、温度記録及び免責 ICC(A)だけで温度損害が当然に補償されるとは限りません。 専門記事と引受回答を確認します。
特殊貨物特約 中古品、危険品、重量物、美術品等の条件 希望条件どおり引受可能とは限りません。 個別照会を行います。

付保依頼・受付・引受承認・証券発行の違い

段階 意味 保険が確定しているか 確認するもの
付保依頼 荷主又はフォワーダーが保険手配を依頼した段階 依頼した事実だけでは確定しません。 依頼メール、申込書、添付資料
受付 保険会社又は保険代理店が依頼を受領した段階 受付だけでは引受承認を意味しません。 受付連絡、受付番号
引受照会 保険会社が資料及び条件を審査している段階 原則として回答前は確定していません。 追加質問、照会書、提出資料
引受回答 保険会社が可否と条件を提示した段階 回答内容、始期、条件及び有効期限によります。 見積書、回答メール、条件書
条件合意 荷主が保険会社の提示条件へ同意した段階 申込み・承諾及び保険始期を確認します。 合意メール、申込書、承認記録
証券発行 成立した契約内容が証券・証明書へ記載された段階 証券発行日と保険開始日は同じとは限りません。 保険証券、保険証明書、特約

付保依頼が遅れた場合

貨物海上保険は、原則として輸送開始前に依頼します。船積後又は輸送開始後の依頼は、通常の付保依頼として自動処理せず、既存契約、事故情報及び当事者の認識を確認します。

状態 入口で確認すること 本記事での対応 詳細確認先
船積前の通常依頼 貨物、区間、金額、条件及び始期 通常の付保フローへ進みます。 付保依頼・引受判断
予定保険の確定通知 危険開始前に予定保険が成立しているか 新規の船積後付保と区別します。 予定保険・確定通知条件
包括予定保険契約の通知遅れ 契約対象、通知期限、事故情報 Late Declarationとして確認します。 船積後付保と引受制限
新規の船積後付保 船積日、依頼日、現在地、事故・異常情報 個別引受照会へ進みます。 船積後付保と引受制限
事故認識後の依頼 誰が、いつ、何を知ったか 通常の新規付保として処理しません。 既存保険、事故対応、責任関係

船積後付保の詳細な法的・約款上の整理は、専門記事で確認します。

付保依頼に添付する資料

資料 主な確認内容 必須になりやすい場面 注意点
Commercial Invoice 貨物名、数量、単価、金額、通貨及び建値 原則としてすべての付保依頼 実貨物と一致しているか確認します。
Packing List 荷姿、数量、重量、寸法及び梱包 複数梱包、重量物、特殊梱包 Invoiceと数量・貨物名を照合します。
Booking 本船、航路、船積日、積替え及び輸送予定 海上輸送 変更時は保険手配側へ共有します。
B/L又はWaybill 実際の輸送、船積日、貨物記載及び区間 船積後又は証券発行時 付保依頼内容との不一致を確認します。
SDS 成分、危険性、UN番号及び取扱い 化学品、危険品の可能性がある貨物 最新版で実貨物と一致するものを使用します。
貨物写真 状態、梱包、既存傷及び荷姿 中古品、重量物、美術品、特殊梱包 撮影日と対象貨物を特定します。
仕様書・カタログ 用途、材質、性能、電池・液体等の有無 品名が抽象的な場合 実際の型式と一致させます。
評価書 価額及び評価根拠 美術品、中古品、展示品、高額品 評価日と評価主体を確認します。
L/C 保険条件、金額、通貨、日付及び書類要求 信用状取引 銀行条件と保険契約の有効性を区別します。
輸送・荷役計画 経路、荷役、積付け、ラッシング及びサーベイ 重量物、プロジェクト貨物 計画変更時は再照会します。

フォワーダーの関与範囲

本記事で使用する五分類は、法令又は業界全体で確立された分類ではなく、本シリーズにおいてフォワーダーの関与範囲を整理するための分析上の枠組みです。

標準五分類 付保依頼に関する主な関与 確認すべき受託範囲 実務上の注意点
Simple Intermediary(単純取次) 荷主から受領した付保情報と資料を保険代理店へ伝達します。 単純転送か、不足項目の確認まで受託したか 不明事項を推測で補完せず、そのまま明示します。
Cargo Transportation Service Provider(貨物利用運送事業者) Booking、輸送区間、船積日、積替え、保管及び輸送方法を整理します。 運送手配と保険手配をどこまで一体で受託したか 輸送変更を保険手配側へ共有します。
NVOCC / House B/L Issuer House B/L発行者として契約輸送区間と実運送人情報を管理します。 付保依頼、変更通知及び証券転送の範囲 House B/Lの一般的な貨物名だけで保険情報が十分とは限りません。
Door-to-Door Single Contractor 集荷、梱包、保管、輸送及び保険手配を一体的に調整します。 保険対象区間、付保時期、条件確認及び変更管理の範囲 Bookingと付保依頼を連動させます。
Agent/Coordinator for Specific Operations(特定業務の代理・調整者) 引受照会、SDS取得、高額承認、L/C確認又は証券手配等を個別に調整します。 委任された業務、期限、承認権限及び報告範囲 保険会社の引受判断を自己判断へ置き換えません。

Contracting Carrier及びActual Carrierは、法的又は契約上の地位を示す概念であり、本記事の標準五分類を置き換えるものではありません。

また、Invoice確認、SDS取得、付保依頼送信、証券転送及びL/C照合等の個別作業は、それ自体で第六の分類を構成するものではありません。

よくある実務ケース

ケース 不足又は問題となった情報 起こり得る問題 必要な確認 初動対応
「Parts」と金額だけで付保依頼した 材質、用途、電池・液体の有無及び梱包 貨物危険を評価できず引受判断が止まります。 仕様書、写真、P/L 貨物内容を具体化します。
FOB金額をそのままSum Insuredにした 運賃、保険料及びrequired insurance percentage 保険金額不足となる可能性があります。 建値、運賃、L/C 詳細計算を確認します。
買主名義か売主名義か不明だった 被保険者、危険移転及び契約上の保険手配者 証券名義と請求権に問題が生じます。 売買契約、Invoice、L/C 保険会社へ名義を照会します。
冷凍食品を一般食品として依頼した 設定温度、予冷、リーファー及び温度記録 必要な温度条件が付帯されません。 製品仕様、温度条件 温度管理貨物として再照会します。
船積後に初めて依頼した 船積日、現在地、事故・異常及び既存契約 船積後付保の個別確認が必要です。 Booking、B/L、本船動静 通常依頼として処理しません。
L/C条件を確認せずICC(C)で依頼した L/C上の保険条件及び付保割合 銀行提出書類が条件不一致となります。 L/C、保険条件 船積前に条件を再確認します。
高額貨物を船積直前に照会した 引受限度額、集積額、警備及び再保険確認 承認が船積日に間に合いません。 価額資料、輸送計画 計画段階で早期照会します。
本船変更を保険手配側へ連絡しなかった 新本船、航路、積替え及び船積日 証券記載と実輸送が不一致となります。 変更Booking 速やかに変更通知します。
中古機械に輸送前写真がなかった 既存損傷、状態及び価額根拠 事故時に損害区分が困難になります。 写真、検品記録、評価資料 船積前資料を取得します。
代理店から返信がないまま船積みした 正式な引受回答及び保険始期 保険が確定していない可能性があります。 受付・回答記録 承認状況を至急確認します。

よくある誤解

よくある誤解 実際の考え方 実務上の対応
品名と金額だけで付保できる 被保険者、区間、建値、輸送方法、条件及び時期も必要です。 必要情報一覧で確認します。
付保依頼を送れば保険は確定する 依頼、受付、引受承認及び証券発行は別段階です。 正式な引受回答を確認します。
保険代理店が受け付ければ必ず補償される 受付だけでは保険会社の承認を意味しません。 条件、始期及び承認を確認します。
被保険者は保険料を払う会社でよい 保険料負担者と被保険利益を持つ者は同一とは限りません。 売買契約と証券名義を確認します。
Incotermsだけで保険手配者が自動的に決まる 個別の売買契約及び実務上の合意も確認する必要があります。 契約書と役割分担を確認します。
CIF×110%はすべての案件で必須である required insurance percentageは契約、L/C及び保険会社の取扱いによります。 根拠となる条件を確認します。
ICC(A)ならすべての損害が補償される 梱包不備、固有の性質、遅延等の除外は残ります。 除外条項と特約を確認します。
船積後でも事故がなければ通常どおり依頼できる 船積後付保は既存契約、事故認識及び遡及担保の確認が必要です。 専門記事に従い個別照会します。
危険品申告を船会社へ出せば保険会社への説明は不要である 輸送受託と保険引受は別の判断です。 SDS等を保険手配側にも共有します。
証券は後から直せばよい 名義、金額、区間又は条件の誤りは事故時やL/C審査で問題になります。 発行前後に照合します。
フォワーダーは依頼内容をそのまま転送すればよい 受託範囲に応じて不足情報の確認が必要となる場合があります。 推測せず荷主へ確認します。
保険証券が発行された日から保険が始まる 証券発行日と契約成立日・保険開始日は同じとは限りません。 引受回答と証券の始期を照合します。

判断チェックリスト

確認タイミング 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
依頼受付前 荷主、営業担当 誰が保険を手配し、誰を被保険者とするか 売買契約と依頼権限を確認します。
貨物確認時 荷主、輸出者、製造者 正式品名、用途、状態、新品・中古、危険品及び温度管理 仕様書、SDS、写真等を取得します。
金額確認時 荷主、経理、保険代理店 Invoice、建値、通貨、運賃、Insurable Value及びSum Insured 計算根拠を確認します。
区間確認時 荷主、フォワーダー、NVOCC 保険開始地、終了地、積替え、保管及び内陸輸送 実際の輸送経路を具体化します。
輸送方法確認時 フォワーダー、船会社、倉庫 FCL、LCL、在来船、航空、トラック、甲板積み等 特殊輸送を保険会社へ照会します。
梱包確認時 荷主、梱包業者、倉庫 木箱、パレット、防水、防錆、防振及びラッシング 写真・梱包仕様を提出します。
条件確認時 荷主、保険代理店、銀行 ICC条件、特約、免責、L/C及びrequired insurance percentage 希望と必要条件を整理します。
時期確認時 荷主、フォワーダー 集荷日、船積日、出港日、依頼日及び保険開始希望日 船積後であれば個別照会します。
依頼送信時 保険会社、保険代理店 送信内容、添付資料、希望回答期限 受付記録を保存します。
引受回答時 保険会社、保険代理店 可否、条件、免責、保険料、始期及び有効期限 条件を荷主へ説明します。
証券発行前 保険会社、保険代理店、荷主 被保険者、貨物、金額、通貨、区間、条件及び日付 不一致を訂正します。
依頼完了後 荷主、フォワーダー、保険代理店 証券、特約、免責、保険料及び関連記録 事故時に確認できる形で保存します。

具体例1:FOB輸入で買主側が付保依頼するケース

日本の買主はFOB条件で機械部品を購入し、船積前に貨物海上保険を手配することになりました。

付保依頼では、買主を被保険者とするか、輸送区間を海外工場から日本国内倉庫までとするか、FOB金額へ運賃等をどのように加算するかを確認しました。

また、売主からBooking、Invoice及びP/Lを取得し、本船、船積日及び貨物内容を特定しました。

このケースでは、Incotermsだけで処理を完了せず、実際の保険手配者、被保険者、開始地及びSum Insuredの根拠を整理することが重要です。

保険会社の引受回答と証券記載を確認した後、付保依頼完了として記録しました。

具体例2:危険品情報が不足していたケース

荷主から「Chemical Products」という品名で付保依頼がありましたが、SDS、UN番号及び危険品クラスが添付されていませんでした。

フォワーダーは一般貨物として依頼を転送せず、荷主へ最新のSDSと危険品申告資料を求めました。

船会社が輸送可能と回答していても、貨物海上保険の引受可否は別に確認する必要があります。

必要資料を保険代理店へ提出した結果、保険会社から条件付きの引受回答が示されました。

付保依頼では、貨物情報が不十分な場合に推測で補完せず、判断権限を持つ者へ正確な資料を提出します。

具体例3:L/C条件と希望条件が一致しなかったケース

CIF輸出取引で、荷主は通常のICC(C)による付保を予定していました。

しかし、信用状を確認すると、ICC(A)、戦争危険・ストライキ危険及びInvoice valueの110%による保険金額が要求されていました。

この場合、通常運用だけで付保依頼を進めると、保険書類がL/C条件へ適合しない可能性があります。

荷主、銀行及び保険代理店で条件を確認し、保険会社へ必要条件で引受可能かを照会しました。

付保依頼段階でL/Cを確認することにより、証券発行後の修正と船積書類不一致を防ぎました。

具体例4:高額貨物を早期照会したケース

半導体製造装置の輸送について、通常の一輸送限度額を超えるSum Insuredが見込まれました。

フォワーダーはBooking確定を待たず、概算価額、輸送予定、梱包及び保管計画を保険代理店へ提出しました。

保険会社は上位承認と追加資料が必要であると回答し、最終的な本船及び金額の確定後に条件を提示しました。

高額貨物では、完全な船積書類がそろうまで付保依頼を遅らせるのではなく、予定情報で早期相談し、確定後に更新する運用が重要です。

ただし、早期相談と正式な引受承認は別であり、最終回答を確認する必要があります。

具体例5:付保依頼後に本船が変更されたケース

付保依頼と引受承認の後、船会社の都合で本船と積替港が変更されました。

荷主は「既に保険を付けたから変更連絡は不要」と考えていましたが、航路、船舶、積替え及び船積日が変わるため、保険手配側へ通知する必要があります。

フォワーダーは変更Bookingを保険代理店へ送り、当初条件をそのまま適用できるか確認しました。

保険会社の回答後、証券記載も新しい本船・航路へ修正しました。

付保依頼は一度送れば終了する作業ではなく、輸送内容の重要な変更を契約処理へ反映する管理を含みます。

付保依頼後に変更が生じた場合

変更事項 保険への影響 必要資料 実務上の対応
貨物内容の変更 引受可否、条件又は危険品分類が変わります。 変更Invoice、仕様書、SDS 再照会します。
数量・金額の変更 Sum Insured及び限度額が変わります。 変更Invoice、数量明細 増減額を通知します。
本船・便名の変更 証券記載、航路及び引受条件へ影響します。 変更Booking 速やかに変更通知します。
航路・積替え変更 事故危険、戦争危険及び保険期間が変わります。 変更輸送計画 条件の再確認を行います。
梱包変更 梱包条件及び事故頻度へ影響します。 写真、梱包仕様 条件適合性を確認します。
保管期間の延長 保険終期又は集積危険へ影響します。 保管場所、期間、集積額 延長又は別契約を確認します。
納品先変更 保険終了地及び国内配送区間が変わります。 配送指示、変更契約 保険対象区間を更新します。

事故が付保依頼後に判明した場合

  1. 付保依頼日時、引受回答日時、保険開始時期及び事故発生日時を確認します。
  2. 誰が、いつ、事故又は異常を知ったかを確認します。
  3. 予定保険、包括予定保険契約その他の既存保険の有無を確認します。
  4. 保険会社及び保険代理店へ事故情報を速やかに開示します。
  5. 新規の付保依頼と事故通知を混同しません。
  6. B/L、Invoice、P/L、Booking、付保依頼及び引受回答を保存します。
  7. 運送人への損害通知及び証拠保全を行います。
  8. フォワーダーの手配漏れが疑われる場合は賠償責任保険へ通知します。
  9. 保険会社の承認なく責任承認、示談又は支払いを行いません。

貨物海上保険とフォワーダー賠償責任保険

付保依頼の漏れ、遅延又は誤りによって貨物が無保険又は条件不足となった場合でも、その損害が当然にフォワーダーの責任となるわけではありません。

フォワーダーが貨物保険手配を受託していたか、必要情報をいつ受領したか、船積前に手配できたか、荷主が正確な情報を提出していたか及び手配上の問題と損害との因果関係を確認します。

一方、明確な付保依頼と必要資料を船積前に受領していたにもかかわらず、保険会社又は保険代理店へ依頼を送らなかった場合は、フォワーダーの契約上又は法律上の責任が問題となる可能性があります。

荷主から請求を受けた場合は、責任を認める回答、示談、費用負担の約束又は支払いを行う前に、フォワーダー賠償責任保険の保険会社又は保険代理店へ相談します。

まとめ

貨物海上保険の付保依頼は、輸送リスクを保険契約へ正確に反映するための入口実務です。

付保依頼では、被保険者、貨物内容、輸送区間、輸送方法、Insurable Value、Sum Insured、建値、required insurance percentage、希望する保険条件及び付保時期を整理します。

付保依頼を送信したこと、保険代理店が受付したこと、保険会社が引受を承認したこと及び保険証券が発行されたことは別段階です。正式な引受回答、保険開始時期及び条件を確認します。

被保険者名は、保険料を負担する者だけで決めるものではありません。売買契約、危険移転、被保険利益及び証券上の権利関係を確認します。

貨物内容、建値・保険金額、船積後付保及び特殊貨物の詳細は、各専門記事で確認します。本記事では、各論へ進むための入口情報と依頼手順を扱います。

ICC(A)、ICC(B)又はICC(C)等の条件名だけでなく、除外条項、免責、戦争・ストライキ危険及び特殊貨物特約を確認します。

船積後又は輸送開始後に初めて付保依頼を行う場合は、通常の船積前依頼として処理せず、既存契約、事故情報及び遡及担保を確認します。

フォワーダーは、荷主から受け取った情報を推測で補完せず、必要資料を取得し、保険会社又は保険代理店へ正確に伝達します。

付保依頼後に貨物、金額、本船、航路、梱包、保管又は納品先が変更された場合は、引受条件及び証券記載を再確認します。

本記事は、貨物海上保険の付保依頼に関する一般的な実務を整理したものであり、個別契約の成立、補償範囲、被保険利益、告知義務、保険金支払い又はフォワーダーの法的責任を断定するものではありません。

実際の案件では、売買契約、付保依頼、Invoice、P/L、Booking、B/L、L/C、SDS、引受回答、保険証券、適用約款及び特約を確認してください。

外航貨物海上保険は、保険料より条件で差が出ます。付保条件の選択と約款の解釈は、専門の保険会社・代理店にご相談ください。

同義語・別表記

  • 貨物保険の申込
  • 海上貨物保険の付保依頼
  • 保険付保依頼
  • 貨物保険手配依頼
  • 貨物保険申込
  • Cargo Insurance Request
  • Marine Cargo Insurance Application
  • Cargo Marine Insurance Application Request

関連用語

公式情報