海上保険の保険料率と算定実務
概要
海上保険の保険料率とは、外航貨物海上保険において、貨物、航路、輸送方法、梱包、保険条件その他の危険度を保険料へ反映するために使用される料率です。
基本的な計算は「保険金額 × 保険料率」ですが、実務ではそれだけでは足りません。Marine Rate、War & Strikes Rate、Additional Premium、最低保険料、船舶条件、CIF・CFR・FOBによる保険金額算定方法、包括予定保険契約における協定料率及び例外貨物の個別引受を分けて確認する必要があります。
また、保険料率は単なる価格表ではありません。同じ貨物価額でも、貨物の性質、荷姿、梱包、輸送区間、使用船舶、積替え、過去の損害実績、保険条件等が異なれば、保険会社のアンダーライティング判断も変わります。
本記事では、個別保険会社の具体的な現行料率そのものではなく、どのような料率が存在し、何を確認して料率を決定し、CIF・CFR・FOBごとに保険料と保険金額をどのように計算するかを中心に整理します。
実際に適用される料率、最低保険料、割増料率、端数処理、指数及び個別引受条件は、保険会社・契約・出荷時点によって異なるため、最終的には実際の見積書、料率表、保険証券、包括予定保険契約及び保険会社又は保険代理店の回答を確認します。
本記事の固有担当範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他の記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| Marine Rate | 通常の輸送危険に対する料率構造 | ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の詳細は保険条件記事で扱う |
| War & Strikes Rate | 戦争・ストライキ等危険に対する別建て料率と変動性 | Institute War Clauses等の担保内容は約款記事で扱う |
| Additional Premium | 通常条件を超える危険に対する追加保険料 | 個別事故の補償可否は保険金請求記事で扱う |
| 船舶条件 | 船齢・船級・船型等が料率判断へ与える影響 | 船舶の堪航性そのものは船舶・運送人責任記事で扱う |
| CIF計算 | CIF価格を基礎とする保険金額・保険料算定 | Incoterms上の売主・買主義務はIncoterms記事で扱う |
| CFR・FOB計算 | 保険料を含めた保険金額の逆算式 | 運賃そのものの算定は物流費用記事で扱う |
| 指数表 | 保険料指数・保険金額指数の使用方法 | 個別保険会社の現行指数値は契約資料で確認する |
| 最低保険料 | 計算保険料が少額の場合の最低額適用 | 各社の具体的最低額は個別契約で確認する |
| オープンポリシー | 協定料率、確定通知、月締め精算、例外貨物 | Declarationの詳細手続は包括予定保険契約記事で扱う |
| アンダーライティング | 料率決定に必要となる情報と判断要素 | 保険会社内部の個別引受基準自体は本記事の対象外 |
保険料率の基本構造
外航貨物海上保険では、保険料率を一つの数字だけで見るのではなく、どの危険に対する料率であるかを分けて確認します。
| 料率・保険料 | 主な対象 | 主な変動要因 | 実務上の確認 |
|---|---|---|---|
| Marine Rate | 通常の輸送危険 | 貨物、航路、梱包、保険条件、輸送方法、損害実績 | 見積書・協定料率を確認する |
| War & Strikes Rate | 戦争・ストライキ等危険 | 地政学情勢、航路、港湾、危険地域、引受市場 | 出荷時点の料率表・個別回答を確認する |
| Additional Premium | 通常条件外の追加危険 | 船舶条件、特殊貨物、特殊航路、条件変更等 | A/Pの原因と追加率を確認する |
| Minimum Premium | 小口契約等 | 保険会社・契約方式 | 計算額と最低保険料を比較する |
| 個別引受料率 | 高額・特殊・例外貨物等 | 貨物価額、リスク特性、集積、輸送計画 | 協定料率を自動適用しない |
Marine Rate
Marine Rateは、通常の海上・航空・陸上を含む貨物輸送危険に対する基本的な保険料率です。
料率は、貨物の種類、性質、荷姿、梱包、輸送区間、輸送用具、積替え、保険条件、季節性及び過去の損害実績等を踏まえて設定されます。
ICC(A)のような比較的広い担保条件と、ICC(B)又はICC(C)のような限定された担保条件では、引受対象となる危険範囲が異なるため、同一貨物でも料率が異なることがあります。
ただし、「ICC(A)なら必ず何%」「ICC(C)なら必ず何%」という固定料率が存在するわけではありません。実際の料率は保険会社の引受判断及び契約条件によって決まります。
War & Strikes Rate
戦争・ストライキ等危険は、Marine Rateとは別建てのWar & Strikes Rate又はWar & S.R.C.C. Rateとして扱われることがあります。
これらの料率は、戦争、内乱、敵対行為、ストライキ、暴動、民衆騒擾その他、採用されている戦争・ストライキ約款で担保される危険に対応します。
戦争危険は地政学情勢の影響を強く受けるため、通常のMarine Rateより短期間で変更されることがあります。見積取得時の料率が、その後の実際の船積時にもそのまま適用されるとは限りません。
London MarketのListed Areasと戦争危険料率を混同しない
ロンドン市場では、Joint War Committee(JWC)が、戦争、海賊、テロその他の関連危険についてリスクが高まっていると評価される地域をListed Areasとして公表しています。
このようなLondon Marketの情報は、国際的な海上戦争リスクを把握するための参考情報となります。
ただし、JWC Listed Areasそのものは、日本の外航貨物海上保険へ一律に適用する貨物戦争保険の「料率表」ではありません。また、Listed Areaに該当したから自動的に特定の追加料率になるというものでもありません。
貨物保険の実務では、契約している保険会社のWar & Strikes Rate Table、包括予定保険契約の協定条件、個別引受回答及び出荷時点の危険状況を確認します。
したがって、「London War Scheduleの料率をそのまま日本の貨物保険へ適用する」と整理するのではなく、London Marketの危険地域情報等も市場環境を把握する材料となり得るが、実際の貨物戦争料率は契約保険会社の料率・引受条件によって決まると理解するのが適切です。
Held Coveredと追加保険料
料率表や保険条件では、Held Covered又はH/Cという表現が使用される場合があります。
Held Coveredは、一定の条件のもとで、別途取り決める保険料により担保を継続する趣旨で使用されます。
航路変更、予定外寄港、危険地域への進入その他、当初の引受条件から重要な変更が生じた場合には、保険会社又は保険代理店へ通知し、担保継続条件及びAdditional Premiumを確認します。
「Held Coveredだから無条件で自動的に補償される」という意味ではありません。通知時期、追加保険料、その他の条件は実際の約款・契約に従います。
Additional Premium
Additional Premium(A/P)は、通常の協定料率又は標準条件だけでは評価できない追加危険がある場合に求められる追加保険料です。
| 追加危険 | 確認事項 | 料率への影響 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 船舶条件 | 船齢、船級、船型等 | A/P又は個別引受となる場合がある | 船名判明時に確認する |
| 特殊貨物 | 重量物、中古品、美術品、展示品等 | 通常料率外となる場合がある | 事前に貨物資料を提出する |
| 危険品 | UN No.、Class、Packing Group等 | 個別料率・条件となる場合がある | SDS等を提出する |
| 危険航路 | 紛争、港湾情勢、航路変更等 | War & Strikes Rate又はA/Pへ影響する | 出荷直前にも再確認する |
| 特殊輸送 | 甲板積み、非自航船、特殊船等 | 追加条件となる場合がある | 輸送方法を正確に申告する |
| 保険条件拡張 | 通常契約にない追加危険 | 追加保険料が必要となる場合がある | 担保内容と料率を同時に確認する |
Institute Classification Clauseと船舶条件
貨物保険では、採用されるInstitute Classification Clauseその他の船舶条件により、使用船舶の船級、船齢、船型、運航形態等が引受判断に影響する場合があります。
ここで注意すべきなのは、「船齢15年を超えれば常に割増」というように単一の数字だけで判断しないことです。適用される約款、船種、定期航路への従事状況その他の条件によって確認内容が異なるため、実際に採用されている約款を確認します。
条件を外れる可能性のある船舶を使用する場合には、通常料率のまま処理せず、船名、建造年、船級、船型その他必要情報を保険会社又は保険代理店へ通知し、A/P又は個別引受の要否を確認します。
船齢・船級・船型を確認する理由
| 確認項目 | 確認する内容 | 料率判断との関係 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 船齢 | 建造年 | 採用約款の条件確認 | 年数だけで自動判定しない |
| 船級 | 船級協会・船級状態 | 標準条件への適合確認 | 船級名だけでなく現状を確認する |
| 船型 | Container Vessel、Bulk Carrier、General Cargo Vessel等 | 適用される船舶条件が異なる場合がある | 同じ船齢でも判定が異なり得る |
| 運航形態 | 定期航路、不定期航路等 | 約款上の扱いに影響する場合がある | 実際の運航状況を確認する |
| 特殊船舶 | 木造船、非自航船等 | 個別引受・A/Pとなる場合がある | 通常船と同じ料率を自動適用しない |
| 積載方法 | 船倉積み、甲板積み等 | 貨物危険の評価へ影響する | 保険条件も同時に確認する |
貨物の種類・梱包・輸送方法と料率
Marine Rateを決める際には、貨物価額だけではなく、損害がどのように発生しやすい貨物かを確認します。
| 貨物・条件 | 主なリスク | 確認資料 | 料率・条件への影響 |
|---|---|---|---|
| 精密機器 | 衝撃、振動、湿気、結露 | 梱包仕様、輸送方法 | 梱包条件等が重視される |
| 食品・冷凍冷蔵品 | 腐敗、温度逸脱、品質劣化 | 温度条件、輸送記録 | 温度危険の担保条件を確認する |
| 中古機械 | 既存損傷、さび、梱包不足 | 写真、Condition Report、梱包仕様 | 個別条件となる場合がある |
| 危険品 | 火災、爆発、漏出 | SDS、危険品申告 | 個別引受となる場合がある |
| 重量物 | 荷崩れ、落下、ラッシング不備 | 重量、重心、積付図 | 輸送計画を含めて確認する |
| 簡易梱包貨物 | 破損、濡損、荷崩れ | 梱包写真、仕様 | 料率だけでなく担保条件にも影響し得る |
アンダーライティングと料率決定
アンダーライティングとは、保険会社がリスクを評価し、引受可否、担保条件及び料率を決定する業務です。
海上保険では、貨物、保険金額、航路、輸送手段、荷姿、梱包、積替え、保険条件、過去の損害実績等を総合的に確認します。
したがって、料率は単なる「貨物価格に対応する数字」ではなく、保険会社によるリスク評価の結果です。
見積時に船名、輸送方法、貨物性状等が未確定であれば、提示された料率が暫定条件となる場合があります。重要事項が判明した時点で再確認します。
実務上の料率確定フロー
新規船積について保険料率と保険金額を確定する場合は、個別の料率だけを見るのではなく、次の順序で確認します。
- 貨物の品目、価額、数量、荷姿、梱包方法その他の貨物情報を確認する。
- 売買条件がCIF、CFR又はFOBのいずれであるかを確認する。
- 積地、仕向地、経由地、積替港、海上・航空・陸上区間その他の輸送経路と輸送方法を確認する。
- 船名が確定した後、必要に応じて船齢、船級、船型、運航形態その他の船舶条件を確認する。
- 危険品、高額貨物、中古品、重量物、展示品、温度管理貨物その他の特殊貨物・例外貨物に該当するか確認する。
- 適用するMarine RateとWar & Strikes Rateを区分し、出荷時点の料率・引受条件を確認する。
- Open Policyの場合は、当該貨物が協定料率の対象か、個別引受を必要とする例外貨物かを確認する。
- CIF、CFR又はFOBに応じて、契約上の保険金額算定方法を選択する。
- CFR又はFOBで保険料自身を含めた逆算が必要な場合は、正式な保険料指数表・保険金額指数表又は逆算式を用いて保険金額と保険料を算定する。
- Minimum Premium、Additional Premium、Held Coveredその他の追加条件が適用されないか確認する。
- 最終的な料率、保険金額、保険料及び適用条件を、保険会社又は保険代理店の見積・回答によって確定する。
特に重要なのは、見積時点と実際の船積時点で、船舶、航路、War & Strikes Rateその他の条件が変わっていないかを最後に再確認することです。
保険料計算の基本
最も基本的な関係は次のとおりです。
保険料 = 保険金額 × 保険料率
料率を計算式へ代入する場合は、0.30%であれば0.003、0.25%であれば0.0025として計算します。
ただし、保険金額そのものを計算する方法はCIF、CFR、FOBで異なるため、先に取引価格に何が含まれているかを確認します。
CIFを基礎とする計算
CIF価格にはCost、Insurance及びFreightが含まれています。保険契約上、CIF価格の110%を保険金額とする場合には、次のように計算できます。
保険金額 = CIF × 110%
保険料 = CIF × 110% × R
Rは保険料率です。
たとえば、CIF価格1,000万円、保険料率0.30%の場合、保険金額は1,100万円、保険料は3万3,000円となります。
ただし、War & Strikes Rate、A/P、最低保険料等が別途適用される契約では、それらも確認します。
CFR・FOBでは保険料を含めて逆算する
CFR価格にはInsuranceが含まれていません。またFOB価格ではFreightも含まれないため、FOBの場合には別途Freightを加えたうえで計算します。
CostをC、FreightをF、保険料率をRとします。
CFR又はFOBを基礎として、保険料自体を含むCIF相当額の110%を保険金額とする場合、次の関係になります。
保険金額 S = 1.1 × (C + F + 保険料)
保険料 = S × R
この二つを連立して整理すると、次の逆算式になります。
保険料 = (C + F) × 1.1R ÷ (1 − 1.1R)
保険金額 = 1.1(C + F) ÷ (1 − 1.1R)
この分母の「1 − 1.1R」が必要になるのは、計算する保険料自身がCIF相当額に含まれ、そのCIF相当額を基礎として保険金額を決めるためです。
CFR・FOB逆算の具体的計算
C + Fが2,000万円、保険料率が0.25%の場合を想定します。
R=0.0025です。
保険料 = 20,000,000 × 1.1 × 0.0025 ÷ (1 − 1.1 × 0.0025)
= 約55,152円
保険金額は、
1.1 × 20,000,000 ÷ (1 − 1.1 × 0.0025)
= 約22,060,667円
となります。
実際の契約では、保険金額・保険料の端数処理方法が定められている場合があるため、最終金額は保険会社又は保険代理店の計算結果を確認します。
保険料指数表・保険金額指数表
CFR・FOBで毎回逆算式を計算する代わりに、保険会社又は保険代理店が提示する保険料指数表・保険金額指数表を使用する場合があります。
基本的な考え方は次のとおりです。
保険料 = 該当料率の保険料指数 × (C + F)
保険金額 = 該当料率の保険金額指数 × (C + F)
保険料指数は、理論上、
1.1R ÷ (1 − 1.1R)
に対応し、保険金額指数は、
1.1 ÷ (1 − 1.1R)
に対応します。
ただし、実際に使用する指数は契約保険会社が提示する指数表を優先し、独自に作成した指数を確定通知へ使用しないよう注意します。
最低保険料
計算上の保険料が少額であっても、契約によってMinimum Premiumが設定されている場合があります。
たとえば、計算保険料が1,200円であっても、契約上の最低保険料がそれを上回っていれば、実際の請求保険料は最低保険料によって決まる場合があります。
最低保険料の金額や適用単位は保険会社・契約方式によって異なります。
個別付保と包括予定保険契約でも取扱いが異なる場合があるため、料率だけで小口貨物の保険料を判断しないことが重要です。
包括予定保険契約と協定料率
包括予定保険契約(Open Policy)では、継続的な輸出入を前提として、貨物種類、航路、保険条件等についてあらかじめ協定料率を設定し、個々の船積についてDeclaration又は確定通知を行う方式があります。
通常貨物は協定料率によって処理できても、高額貨物、危険品、特殊貨物、特殊輸送、通常条件外の船舶又は危険航路等は個別引受となる場合があります。
したがって、オープンポリシーでは「料率マスター」と「個別確認が必要な例外条件」を社内で同時に管理することが重要です。
料率が見直される主な場面
| 場面 | 変化する情報 | 料率への影響 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 保険更改 | 年間損害実績、取扱額等 | 協定Marine Rateの見直し | Loss Recordと出荷実績を確認する |
| 新商品開始 | 貨物性質・梱包 | 別料率となる場合がある | 事前見積を取得する |
| 航路変更 | 経由地・積替港 | Marine又はWar Rateへ影響 | 変更前に通知する |
| 地政学情勢悪化 | War Risk | War & Strikes Rateが短期変更される場合がある | 出荷直前に再確認する |
| 船舶変更 | 船齢・船級・船型 | A/P又は個別引受となる場合がある | 船名判明時に確認する |
| 保険条件拡張 | 担保範囲 | Marine Rate等の再設定 | 料率と補償範囲を同時に確認する |
料率判断で確認する主な資料
| 資料 | 確認目的 | 重要度 | 不足時の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険見積書・料率表 | 適用料率・条件 | 必須 | 保険会社・保険代理店へ確認する |
| 保険証券・包括予定保険契約 | 協定条件・対象貨物 | 必須 | 適用契約を特定する |
| Invoice | Cost、CIF、CFR、FOB価格 | 必須 | 取引条件を確認する |
| Freight資料 | FOB・CFR計算 | 高 | Freightを確定する |
| Packing List | 貨物・荷姿・数量 | 高 | 貨物情報を補完する |
| B/L・Sea Waybill・Air Waybill | 航路・輸送方法 | 高 | Booking情報も確認する |
| 船舶情報 | 船齢・船級・船型 | 該当案件で高 | shipping line等へ確認する |
| SDS・危険品資料 | 危険品引受 | 該当案件で必須 | 分類確定前に通常料率を適用しない |
| Loss Record | 契約更改・料率交渉 | 高 | 一定期間の損害実績を整理する |
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な問題 | 確認資料 | 対応 |
|---|---|---|---|
| CIF貨物で110%を掛け忘れた | 保険金額不足 | Invoice、保険証券 | 契約上の保険金額設定を確認する |
| CFR価格へ単純に110%を掛けた | Insuranceを含めた逆算がされていない | Invoice、Freight、Rate | 逆算式又は指数表を使用する |
| FOB価格だけで保険金額を計算した | Freightが欠落 | FOB Invoice、Freight | C+Fを確定して計算する |
| 協定Marine Rateだけで特殊貨物を処理した | 個別引受条件の見落とし | Open Policy、貨物資料 | 例外貨物条件を確認する |
| 船名確定後も船舶条件を確認しなかった | A/Pの見落とし | 船名、船齢、船級 | 出荷前に個別確認する |
| 古いWar Rateをそのまま使用した | 出荷時点の料率と不一致 | 最新料率表・保険会社回答 | 出荷時点で再確認する |
| 最低保険料を考慮しなかった | 見積保険料と請求額が異なる | 契約条件 | Minimum Premiumを確認する |
| 他社の料率表を自社契約へ流用した | 契約条件不一致 | 自社保険契約 | 契約保険会社の条件を優先する |
想定例1:CIF価格1,000万円の通常計算
以下は計算構造を説明するための想定例です。
横浜港からシンガポール港へ輸出する一般機械部品について、CIF価格が1,000万円、契約上の保険金額がCIFの110%、Marine Rateが0.30%であるとします。
保険金額は1,100万円となり、Marine Premiumは、
11,000,000円 × 0.30% = 33,000円
です。
荷主が「料率0.30%なら1,000万円×0.30%=3万円ではないか」と確認したのに対し、保険代理店は「本契約ではCIF価格ではなくCIFの110%である保険金額に料率を乗じる」と説明しました。
さらにWar & Strikes Rate、A/P又はMinimum Premiumが設定されている場合には、Marine Premiumだけで最終保険料を確定しません。
想定例2:CFR2,000万円を逆算する場合
神戸港からバンコク港へ輸出する設備部品について、CFR価格が2,000万円、保険料率が0.25%であるとします。
荷主担当者は「2,000万円×110%=2,200万円を保険金額にすればよい」と考えました。
しかし、CFR価格にはInsuranceが含まれておらず、本件では保険料自身を含めたCIF相当額を基礎として110%の保険金額を設定するため、逆算が必要です。
計算前の端数処理を行わない理論値では、保険料は約55,152円、保険金額は約22,060,667円となります。
このケースの重要点は、CFR又はFOBで「C+Fに110%を掛けるだけ」と、保険料を含めて逆算する方法は同じではないという点です。
想定例3:船舶条件によりA/Pが提示された場合
大阪港からジャカルタ港へ輸出する機械部品について、CIF価格2,400万円、通常のMarine Rateが0.25%で見積もられていたとします。
Booking後に使用船舶が判明し、その船齢・船型等について、契約に採用されている船舶条件上、個別確認が必要となりました。
荷主は「同じ大阪―ジャカルタ航路を以前も0.25%で付保している」と主張しましたが、保険会社は「前回と今回では使用船舶が異なるため、同じ料率を自動適用できない」と回答しました。
想定上、保険会社がA/P 0.15%を追加し、合計0.40%を提示した場合、CIF×110%の保険金額2,640万円に対するMarine Premium等の単純比較では、0.25%なら6万6,000円、0.40%なら10万5,600円となります。
この例の0.15%は説明用の想定値であり、実際のA/Pは船舶条件及び保険会社の個別判断によって決まります。
想定例4:出荷直前にWar & Strikes Rateが変更された場合
東京港から欧州向けに輸出する精密機器について、CIF価格5,000万円で見積りを作成した時点では、War & Strikes Rateが0.05%であるとします。
その後、地政学情勢が悪化し、実際の船積前に保険会社から当該航路についてWar & Strikes Rateを0.20%へ変更する旨の回答があったと想定します。
荷主は「見積時の0.05%で契約済みではないか」と主張しましたが、保険代理店は「戦争危険料率は出荷時点の条件によって変更される契約となっている」と説明しました。
CIF×110%の保険金額5,500万円に対し、0.05%なら2万7,500円、0.20%なら11万円となり、差額は8万2,500円です。
このケースで重要なのは、London Marketの危険地域情報だけを見て料率を自己判断するのではなく、実際の契約保険会社が当該船積へ適用するWar & Strikes Rateを確認することです。
想定例5:Open Policyの例外貨物を通常料率で処理した場合
継続的に機械類を輸出するメーカーがOpen Policyを利用し、通常貨物についてMarine Rate 0.20%を協定しているとします。
ある月、通常貨物とは別に、保険金額8,000万円の大型展示機械を海外展示会向けに輸送しました。
経理担当者は通常貨物と同じ0.20%で確定通知を行おうとしましたが、保険契約では一定額を超える高額貨物・展示品について事前の個別引受が必要とされていました。
荷主は「年間契約なので全貨物が協定料率ではないのか」と確認しましたが、保険会社は「Open Policyでも例外貨物は個別引受条件に従う」と回答しました。
想定上、個別料率が0.45%であれば、8,000万円に対する保険料は0.20%で16万円、0.45%で36万円となり、20万円の差が生じます。
このケースの重要点は、Open Policyは全貨物を無条件・同一料率にする契約ではなく、協定料率と例外条件をセットで管理する必要があるという点です。
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 保険料率は貨物価格だけで決まる | 貨物、航路、梱包、輸送方法、条件、損害実績等を総合評価する | 見積時にリスク情報を揃える |
| 料率0.30%ならInvoice価格に0.30%を掛ければよい | まず保険金額を確定する必要がある | CIF・CFR・FOBを区別する |
| CFRはCFR価格×110%で必ず正確に計算できる | 保険料をCIF相当額へ含める契約では逆算が必要である | 逆算式又は指数表を使用する |
| FOBではFOB価格だけで保険金額を計算できる | Freightを加えてC+Fを把握する必要がある | 運賃資料を取得する |
| 戦争危険料率は毎年固定である | 地政学情勢等により短期間で変更される場合がある | 出荷時点で確認する |
| JWC Listed Areasには一律の貨物戦争料率が付いている | Listed Areasは危険地域情報であり、個別貨物契約の料率表そのものではない | 契約保険会社の料率を確認する |
| 船齢が一定年数を超えれば必ず同じA/Pになる | 適用約款、船種、運航条件等によって判断する | 実際の船舶条件を確認する |
| Open Policyならすべて協定料率で処理できる | 高額・特殊・危険貨物等が個別引受となる場合がある | 例外条件を確認する |
| 料率が安い保険が必ず有利である | 担保範囲や免責が異なれば単純比較できない | 料率と補償内容を同時に比較する |
| 最低保険料は料率計算と関係ない | 計算額よりMinimum Premiumが優先される場合がある | 小口貨物では特に確認する |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険見積依頼時 | 荷主・保険代理店 | 貨物、価格、航路、条件、梱包 | 情報不足のまま確定料率としない |
| 取引条件確認時 | 荷主・営業担当 | CIF、CFR、FOBのいずれか | 保険金額算定方法を切り替える |
| CFR・FOB計算時 | 保険代理店 | C、F、R及び使用する指数 | 逆算式又は正式な指数表を使用する |
| 特殊貨物受託時 | 荷主・保険会社 | 通常協定料率の対象か | 個別引受を依頼する |
| 船名確定時 | shipping line・保険会社 | 船齢、船級、船型 | A/Pの要否を確認する |
| 危険航路通過時 | 保険会社・保険代理店 | 最新War & Strikes Rate | 出荷前に追加保険料を確認する |
| Held Covered該当時 | 保険会社 | 通知条件、A/P、担保継続条件 | 速やかに通知する |
| 小口貨物付保時 | 保険代理店 | Minimum Premium | 計算保険料と比較する |
| Open Policy確定通知時 | 社内保険担当・保険代理店 | 協定料率・例外貨物 | 個別確認対象を分離する |
| 契約更改時 | 保険会社・保険代理店 | 年間取扱高、Loss Record、料率 | 料率改定理由を確認する |
| 他社料率と比較時 | 保険代理店 | 担保条件、免責、最低保険料 | 料率だけで比較しない |
保険会社・保険代理店へ確認すべき場面
- CFR又はFOBで保険料込みの保険金額を算定する場合
- 使用する保険料指数・保険金額指数が不明な場合
- 船名確定後、船齢・船級・船型が通常条件内か不明な場合
- 高額貨物、危険品、中古品、展示品、重量物その他の特殊貨物を付保する場合
- 戦争・ストライキ等危険料率が変更されている可能性がある場合
- Held Covered又はH/C表示となっている航路・条件を扱う場合
- Open Policyで通常協定料率を適用できるか不明な貨物を扱う場合
- Minimum Premium、A/P又は個別引受条件が不明な場合
- 見積時と実際の船積条件が変更された場合
まとめ
海上保険の保険料率は、単純な保険料計算用の数字ではなく、貨物、航路、梱包、輸送方法、保険条件、船舶条件、損害実績等を反映したアンダーライティングの結果です。
実務では、Marine Rate、War & Strikes Rate、Additional Premium、Minimum Premium及び個別引受料率を区別します。
戦争危険については、London MarketのJWC Listed Areas等が国際的な危険状況を把握する参考となる場合がありますが、それ自体を日本の貨物保険へ適用する一律の戦争料率表と理解してはいけません。実際の料率は、契約保険会社のWar & Strikes Rate Table、契約条件及び個別引受回答で確認します。
CIFでは契約上CIF×110%を保険金額とする場合、比較的単純に保険料を計算できます。一方、CFR・FOBではInsuranceを含めたCIF相当額を基礎とするため、契約条件に応じて逆算式又は保険料指数表・保険金額指数表を使用します。
特にCFR・FOBでは、「C+Fへ110%を掛けるだけ」と「保険料自身を含めて逆算する方法」を混同しないことが重要です。
Open Policyでも、すべての貨物へ同じ協定料率を自動適用できるとは限りません。高額貨物、特殊貨物、危険品、通常条件外の船舶・航路等については、個別引受の要否を確認します。
荷主・フォワーダー・保険代理店は、料率の安さだけを比較するのではなく、保険金額の計算方法、担保条件、例外条件、A/P、最低保険料及び出荷時点のWar & Strikes Rateを含めて総合的に確認する必要があります。
