外航貨物海上保険の保険条件(担保危険)
概要
外航貨物海上保険の保険条件(担保危険)とは、国際輸送中に貨物へ損害が発生した場合に、どの原因による滅失・損傷を保険会社が補償対象とするかを定める契約条件です。
実務では、単に「貨物保険に加入しているか」を確認するだけでは足りません。保険証券に記載されたICC(A)、ICC(B)、ICC(C)、ICC(Air)、Institute War Clauses、Institute Strikes Clauses及び個別の追加担保・特別約款を確認する必要があります。
同じ水濡れ、火災、盗難又は貨物不着でも、事故原因によって適用される約款が異なります。例えば、水濡れには海水浸入、雨濡れ、結露、配管漏水、消火活動、温度変化及び梱包不十分があり、すべてが同一の担保危険として扱われるわけではありません。
また、ICC(A)は一般にall risks条件と呼ばれますが、あらゆる経済的損失を無条件に補償するものではありません。梱包不十分、貨物固有の性質、通常の減耗、遅延、戦争、ストライキ・暴動・テロ等の免責事項があり、個別の特別約款によって補償範囲が修正される場合があります。
本記事では、事故原因から適用約款を特定する判断を主軸とし、ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の条文比較、保険期間及びICC2009の沿革については、既存の専門記事へ委譲します。
この記事で扱う範囲
| 項目 | この記事で扱う内容 | 他記事で扱う内容 |
|---|---|---|
| 担保危険の全体構造 | 海上危険、War危険、Strikes等危険及び追加担保の役割 | ICC2009約款(Institute Cargo Clauses 2009)で約款体系全体を扱う |
| ICC(A)・ICC(B)・ICC(C) | 事故原因を分類するために必要な基本的差異 | 協会貨物約款(ICC-A・ICC-B・ICC-C)の違いで列挙危険を詳しく比較する |
| ICC2009への改定 | 現在の担保危険を理解するために必要な範囲だけを扱う | ICC2009新約款の主な変更点で1982年版からの改定を扱う |
| 保険期間 | 基本ICCとWar・Strikesで期間が異なることだけを確認する | 外航貨物海上保険の保険期間で始期・終期、60日・30日・War期間を扱う |
| 一般免責 | 担保危険の判断と一体で確認すべき主要免責 | ICC免責条項の専門記事で各免責の詳細を扱う |
| War危険 | 戦争・内乱・敵対行為・遺棄兵器等の基本的分類 | Institute War Clausesの記事で期間、取消し、航路別引受を扱う |
| Strikes等危険 | ストライキ参加者、暴動、騒乱、テロ等による物的損害 | Institute Strikes Clausesの記事で個別要件及び終期を扱う |
| 追加担保 | TPND、Malicious Damage、Piracy等を検討する場面 | 各追加担保の記事で個別約款の適用要件を扱う |
| L/C・売買契約 | 契約指定条件と実際の証券条件の照合 | L/C保険書類のディスクレパンシーで銀行審査を扱う |
| 事故対応 | 事故原因から適用約款を特定する初期判断 | 貨物保険金請求の記事で通知、立証及び請求手続を扱う |
| 運送人責任 | 貨物保険上の担保危険と運送人責任が別であること | 運送人への貨物損害賠償請求で責任制限及び求償を扱う |
本記事の判断が適用される場面
| 適用場面 | 確認する目的 | 主に確認する条件 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 一輸送ごとに貨物保険を手配する場合 | 貨物・航路・輸送方法に適した担保危険を選択する | ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)、War、Strikes、追加担保 | 保険料だけでなく、除外される事故原因を確認する |
| 包括予定保険へ輸送を申告する場合 | 当該貨物・航路が包括条件の対象か確認する | 包括契約の基本条件、除外貨物、個別承認条件 | 特殊貨物又は特殊航路は通常条件をそのまま適用できない場合がある |
| CIF又はCIPで売主が保険を手配する場合 | 売買契約上必要な保険条件を満たす | 指定ICC条件、War・Strikes、保険金額、保険区間 | 最低限の保険手配義務と買主が必要とする実際の補償を区別する |
| FOB又はFCAで買主が保険を手配する場合 | 危険移転後の貨物損害を適切に担保する | 保険始期、内陸区間、盗難・荷役破損等の追加担保 | 本船積込前又は最初の運送人引渡し後の無保険区間を防ぐ |
| L/C取引で保険書類を発行する場合 | L/C指定条件と保険証券を一致させる | ICC条件、War、Strikes、追加担保、通貨、保険金額 | 補償が実務上十分でも、L/C文言と不一致ならディスクレパンシーとなり得る |
| ICC(B)又はICC(C)を選択する場合 | 列挙危険に含まれない頻出事故を特定する | TPND、RFWD、Breakage、Contamination、Piracy等 | 貨物名だけでなく、損害が発生する具体的工程を確認する |
| War又はStrikes危険を付帯する場合 | 通常ICCで免責となる危険を補完する | Institute War Clauses、Institute Strikes Clauses | 危険地域、保険期間、料率及び取消条件は基本ICCと異なる場合がある |
| 事故発生後に保険金請求を検討する場合 | 損害原因がどの担保危険又は免責へ該当するか整理する | 基本ICC、War、Strikes、追加担保、免責条項 | 損害の外形ではなく、具体的な事故原因を特定する |
| 保険条件を更新又は見直す場合 | 過去事故と現在の担保範囲の不足を照合する | 事故原因別Loss Record、現行約款、免責金額 | 料率引下げと補償縮小を混同しない |
| フォワーダーが貨物・航路情報を保険関係者へ伝える場合 | 引受判断に必要な事実情報を正確に共有する | 貨物、梱包、輸送用具、航路、積替え、保管 | 事実情報の伝達と保険商品の推奨・確定を区別する |
本記事の判断がそのまま適用されない場面
| 場面 | そのまま適用できない理由 | 優先して確認する契約・条件 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 国内輸送だけを対象とする保険 | 外航貨物用ICCではなく、国内運送保険の約款が適用される | 国内運送保険普通約款、個別特約 | ICCのA・B・Cへ機械的に置き換えず、国内約款を確認する |
| 保険会社独自の英文又は和文約款が適用される場合 | 標準ICCが全部又は一部置き換えられている可能性がある | 保険証券、独自約款、endorsement | 標準ICCとの差分を条項単位で確認する |
| ICC(1982)又は旧約款が適用される場合 | ICC2009と担保危険・免責・用語が異なる | 約款名称、版の日付、MAR又はS.G.フォーム | 現在のICC2009の説明をそのまま当てはめない |
| 冷凍・冷蔵貨物 | 温度変化、冷凍機械停止及び遅延について貨物別条件が優先する場合がある | Frozen Food Clauses、Temperature Clause、機械故障条件 | 温度・停止時間・遅延要件を個別に確認する |
| 中古品・中古機械 | 既存損傷、錆、摩耗、修理限度等について特別条件が付くことがある | Used Machinery Clause、Survey Warranty、Replacement Clause | 船積前状態及び鑑定記録を確保する |
| バルク液体・ケミカル貨物 | 汚染、前荷、タンク洗浄、自然減耗について専用条件が必要となる | Bulk Oil Clauses、Contamination条件、タンク証明 | 積載タンク及び前荷履歴を確認する |
| プロジェクト貨物・重量物 | 甲板積み、曳航、重量物荷役、Marine Warranty Survey等が条件となる | Project Cargo Endorsement、MWS Warranty、On-Deck条件 | 標準ICCだけで担保範囲を判断しない |
| 航空貨物 | ICC(Air)及び航空貨物特有の保険期間・輸送工程が適用される | Institute Cargo Clauses (Air)、AWB、航空上屋記録 | 海上貨物のICC(B)・ICC(C)比較をそのまま使用しない |
| 郵便物・クーリエ貨物 | 通常のICC(Air)又は貨物保険の対象区間・証拠書類と異なる場合がある | 郵便物条件、Courier契約、個別保険条件 | 輸送主体、受領記録及び補償制度を確認する |
| 在庫保管又は輸送終了後の倉庫保管 | Transit Clauseではなく財産保険・倉庫保険の領域となる | 倉庫保険、動産総合保険、保管契約 | 輸送保険の追加担保だけで処理しない |
| 運送人賠償責任保険の補償を確認する場合 | 荷主貨物保険と運送人の法律上・契約上の賠償責任は別制度である | 運送約款、B/L裏面約款、賠償責任保険証券 | 貨物保険の担保危険を運送人責任へ直接置き換えない |
| 制裁・輸出入規制・行政差止めだけが問題となる場合 | 貨物の物的損害がなく、担保危険の問題ではない場合がある | Sanction Clause、貿易規制、行政命令 | 取引不能・遅延・費用と物的損害を区別する |
担保危険を分ける制度的理由
外航貨物海上保険では、通常の運送事故、戦争・武力衝突、ストライキ・暴動・テロ等を一つの約款で処理せず、異なる約款群へ分けています。
通常の運送事故は、貨物の性質、梱包、輸送方法、航路、荷役及び保管等によって危険度を評価できます。一方、戦争、武力衝突、暴動及びテロ等は、特定地域へ損害が集中し、短期間に危険が変化し、保険会社の引受可否、追加保険料又は取消条件が変わる可能性があります。
そのため、基本となるICCではWar及びStrikes等の危険を免責とし、必要な場合にInstitute War Clauses又はInstitute Strikes Clausesを組み合わせる構造が採られています。
この分離は、単なる約款名称の違いではありません。事故原因、保険期間、追加保険料、取消し、通知及び引受可能地域が異なるため、事故時にはどの約款が働くかを個別に確認する必要があります。
担保危険の基本構造
| 危険区分 | 主な約款 | 主な対象 | 基本ICCでの扱い | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 通常の貨物危険 | ICC(A)・ICC(B)・ICC(C) | 火災、衝突、水濡れ、破損等の運送中損害 | 選択したICC条件に従う | A・B・Cで原因の立証方法と範囲が異なる |
| 航空貨物危険 | ICC(Air) | 航空輸送及びこれに付随する輸送中損害 | 航空貨物用all risks条件を基本とする | 海上貨物のB・C条件とは構造が異なる |
| 戦争危険 | Institute War Clauses | 戦争、内乱、敵対行為、一定の捕獲・抑留、遺棄兵器 | 基本ICCでは免責 | 担保期間が基本ICCと大きく異なる |
| ストライキ等危険 | Institute Strikes Clauses | ストライキ参加者、暴動、騒乱、テロ、政治的動機等による損害 | 基本ICCでは免責 | 労働力不足や遅延そのものは別問題である |
| 追加担保危険 | TPND、Malicious Damage、Piracyその他 | 基本条件で不足又は不明確となる特定危険 | 自動的に付帯するとは限らない | 実際の特別約款名及び文言を確認する |
| 貨物別条件 | 冷凍品、中古品、機械、バルク等の特別約款 | 貨物固有の危険、損害算定、修理・交換等 | 標準ICCを修正する場合がある | 基本条件より個別特約が優先することがある |
ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の基本的な違い
| 条件 | 担保方式 | 主な特徴 | 事故時の主な確認 | 代表的な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ICC(A) | 免責事項を除くall risks方式 | 保険期間中の貨物の滅失・損傷を広く対象とする | 損害発生、保険期間、免責及び因果関係 | all risksは「あらゆる損失」の意味ではない |
| ICC(B) | 列挙危険方式 | 主要海難に加え、地震、噴火、雷、波ざらい、水の浸入等を列挙する | 損害が列挙危険へ合理的に帰属するか | 盗難、単純破損、雨濡れ等が当然に含まれるとは限らない |
| ICC(C) | 限定された列挙危険方式 | 火災、爆発、座礁、沈没、転覆、衝突、共同海損犠牲、投荷等が中心 | 損害が限定された列挙危険へ帰属するか | 通常の荷役破損、水濡れ、盗難等には不足しやすい |
| ICC(Air) | 航空貨物用all risks方式 | 免責事項を除き、航空貨物の滅失・損傷を広く対象とする | 航空輸送及び付随区間、免責、保険期間 | 郵便物等には別条件が必要となる場合がある |
ICC(A)では、特定の列挙危険名へ事故を当てはめることより、保険期間中に貨物の偶発的な滅失又は損傷が生じたことと、免責事項に該当しないことが中心となります。
ICC(B)及びICC(C)では、損害の発生だけでなく、その損害が約款に列挙された危険によって生じたことを確認する必要があります。
例えば、輸送中に機械がへこんでいても、原因が車両の衝突であればICC(B)又はICC(C)の列挙危険に該当する可能性があります。一方、原因不明の通常荷役中の接触又は振動であれば、同じへこみでも列挙危険に該当しない可能性があります。
ICC(B)とICC(C)の列挙危険の差
| 危険 | ICC(B) | ICC(C) | 実務上の意味 |
|---|---|---|---|
| 火災・爆発 | 対象 | 対象 | 原因が免責危険でないことも確認する |
| 船舶の座礁・沈没・転覆 | 対象 | 対象 | 損害が当該事故へ合理的に帰属する必要がある |
| 陸上輸送用具の転覆・脱線 | 対象 | 対象 | 単なる急制動又は振動とは区別する |
| 輸送用具の外部物体との衝突・接触 | 対象 | 対象 | 水との接触はこの列挙から除かれる |
| 避難港での荷卸し | 対象 | 対象 | 避難港荷卸しとの因果関係を確認する |
| 地震・噴火・雷 | 対象 | 列挙なし | ICC(C)では別の列挙危険が作用しない限り不足する |
| 共同海損犠牲 | 対象 | 対象 | 共同海損分担金とは別の概念も含まれる |
| 投荷 | 対象 | 対象 | 適法な共同海損行為か否かだけで決まらない |
| 波ざらい | 対象 | 列挙なし | 甲板積み条件及び申告も確認する |
| 海水・湖水・河川水の浸入 | 対象 | 列挙なし | 雨水・結露等とは区別する |
| 船積み・荷卸し中の梱包1個の全損 | 対象 | 列挙なし | 部分損ではなく梱包1個の全損が条件となる |
ICC(B)に水の浸入危険が列挙されていても、すべての水濡れが対象となるわけではありません。約款が列挙する海水、湖水又は河川水の浸入と、雨水、結露、配管漏水、消火用水又は温度変化による水分を区別する必要があります。
all risks条件でも確認が必要な主要免責
| 免責区分 | 基本的な内容 | 事故例 | 確認する事実 |
|---|---|---|---|
| 被保険者の故意 | 被保険者の故意による損害 | 意図的な貨物破壊 | 行為者、指示、動機及び権限 |
| 通常の漏損・減量・摩耗 | 輸送に通常伴う自然な減少・劣化 | 自然蒸発、通常摩耗 | 異常事故か通常減耗か |
| 梱包不十分・不適切 | 一定の被保険者側梱包又は保険開始前梱包による損害 | 固定不足による機械転倒 | 作業主体、作業時期、通常輸送への適合性 |
| 貨物固有の性質 | 貨物自体の自然な性質による損害 | 自然発熱、自然腐敗、自己変質 | 外部事故の有無、商品特性、温度履歴 |
| 遅延 | 担保危険が遅延を生じさせた場合を含む遅延損害 | 納期遅れ、価格下落、違約金 | 物的損害か純粋な時間損失か |
| 倒産・財務不履行 | 一定の認識がある船主等の倒産による損害 | 運送中断、貨物留置 | 被保険者の認識、譲受人、運送継続可能性 |
| 不堪航・不適合 | 一定の認識がある船舶・コンテナ等の不適合 | 不適切なコンテナによる濡損 | 積込み主体、認識、保険契約譲受人 |
| 戦争危険 | 戦争、内乱、敵対行為、一定の捕獲等 | 武力攻撃、遺棄機雷 | War Clausesの付帯及び期間 |
| ストライキ・暴動・テロ等 | ストライキ参加者、暴動、テロ等による損害 | 暴徒による倉庫放火 | Strikes Clausesの付帯及び行為者の動機 |
| 核・放射能等 | 核分裂・核融合等を使用した兵器・装置に関連する損害 | 核兵器による汚染 | 追加の放射能・CBRN免責条項 |
事故がICC(A)のall risks条件に入るように見えても、事故原因が免責危険に該当すれば補償されない可能性があります。
逆に、損害の一部に免責原因が関係していても、別の担保危険が独立して損害を生じさせた場合には、原因の競合及び損害範囲を詳しく分析する必要があります。
War危険の基本的な対象
| War危険 | 基本的な内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 戦争・内戦 | 国家間戦争及び国内の武力衝突 | 正式な宣戦布告の有無だけで判断しない |
| 革命・反乱・暴動的内乱 | 政府又は権力に対する組織的武力行動 | 一般的な暴動との区別が必要となる |
| 敵対行為 | 交戦勢力による敵対的行為 | 行為者及び紛争との関連を確認する |
| 捕獲・拿捕・抑留等 | 担保される戦争危険から生じる一定の拘束 | 税関差止めや通常の行政処分が当然に含まれるわけではない |
| 遺棄機雷・魚雷・爆弾 | 過去の戦争等で残された兵器による損害 | 通常ICCの衝突危険よりWar免責が優先する可能性がある |
| 共同海損・救助料 | 担保War危険を回避するための一定の費用 | 原因となった危険がWar約款で担保される必要がある |
War Clausesが付帯されていても、戦争に関連するあらゆる費用を補償するわけではありません。遅延、航海目的の達成不能、通常の行政処分、制裁による取引不能及び市場価格下落等は、貨物の物的損害と分けて確認します。
海賊危険は、通常のWar危険と同一ではありません。ICC(A)ではWar免責条項上、piracyが捕獲・拿捕等の免責から除外されていますが、ICC(B)及びICC(C)は列挙危険方式であるため、海賊行為が免責から除かれていることだけで自動的に担保されるとは限りません。必要に応じてPiracy Clauseの有無を確認します。
Strikes・暴動・テロ等危険の基本的な対象
| 危険 | 基本的な対象 | 対象にならない可能性が高いもの | 判断資料 |
|---|---|---|---|
| ストライキ参加者による物的損害 | 参加者が貨物を破壊、放火又は損傷した場合 | 単なる作業停止 | 警察記録、映像、現地報告 |
| ロックアウトされた労働者による損害 | 当該者の行為で貨物が損傷した場合 | 人員不足による荷役遅延 | 雇用・港湾記録、事故記録 |
| 労働争議・暴動・騒乱参加者による損害 | 参加者の直接行為による貨物損害 | 地域封鎖だけによる納期遅れ | 行政発表、報道、サーベイ |
| テロ行為 | 政府へ暴力的影響を与える組織に関連する行為 | 一般犯罪又は金銭目的だけの行為 | 捜査記録、犯行声明、動機 |
| 政治的・思想的・宗教的動機の行為 | 当該動機を持つ者の行為による損害 | 動機が立証されない通常の破壊行為 | 行為者、声明、捜査資料 |
| 共同海損・救助料 | 担保Strikes危険を回避するための一定の費用 | 純粋な遅延費用 | 共同海損精算、事故原因 |
Institute Strikes Clausesは、ストライキが存在するだけで補償する約款ではありません。原則として、担保された者又は行為によって貨物へ物的な滅失又は損傷が生じたことが必要です。
ストライキによる労働力の不足、港湾閉鎖、輸送の遅延、販売機会喪失、違約金及び市場価格下落は、Strikes Clausesが付帯されていても当然に補償されません。
事故原因別の担保危険判断
| 損害の外形 | 考えられる原因 | 最初に確認する約款 | 典型的な誤り |
|---|---|---|---|
| 水濡れ | 海水浸入 | ICC(A)又はICC(B) | 水濡れという結果だけで判断する |
| 水濡れ | 雨濡れ・配管漏水 | ICC(A)又は追加担保 | ICC(B)の水浸入危険にすべて含める |
| 水濡れ | 結露・汗濡れ | ICC(A)、Sweat条件、固有の性質免責 | 外部からの水の浸入と同一視する |
| 盗難・荷抜き | 通常犯罪 | ICC(A)又はTPND | ICC(B)・ICC(C)でも盗難が当然に対象と考える |
| 貨物不着 | 梱包単位の盗難・誤配 | ICC(A)又はTPND | 運送人の不着確認だけで保険担保を確定する |
| 破損・へこみ | 車両衝突・転覆 | ICC(A)・ICC(B)・ICC(C) | 損傷名だけを見て追加担保が必要と決める |
| 破損・へこみ | 通常荷役・振動 | ICC(A)又はBreakage等の追加条件 | ICC(B)・ICC(C)の衝突危険へ無条件に含める |
| 火災 | 通常の偶発火災 | ICC(A)・ICC(B)・ICC(C) | 出火原因となった免責危険を確認しない |
| 火災 | 暴徒又はスト参加者による放火 | Institute Strikes Clauses | 火災列挙だけで基本ICCを適用する |
| 爆発・破壊 | 遺棄機雷・爆弾 | Institute War Clauses | 通常の火災・衝突危険だけで処理する |
| 温度損害 | 冷凍機械の偶発故障 | ICC(A)及び温度関連特約 | ICC(A)なら温度変化を無条件に補償すると考える |
| 温度損害 | ストライキによる輸送遅延 | 遅延免責、Strikes Clauses、温度特約 | ストライキが原因なら全損害を担保すると考える |
ICC(B)・ICC(C)で追加担保を検討する場面
次の名称は、市場で使用される代表例です。すべての保険会社が同一名称・同一文言を使用するとは限りません。
| 追加担保・特別約款 | 検討しやすい貨物・危険 | 基本条件で不足し得る理由 | 確認すべき事項 |
|---|---|---|---|
| TPND | 電子部品、アパレル、小型高額品 | ICC(B)・ICC(C)では盗難、荷抜き、不着が列挙されていない | 梱包単位、Non-Deliveryの定義、数量差 |
| RFWD | 紙、繊維、食品、機械、雨に弱い貨物 | ICC(B)の水浸入危険が雨濡れ等をすべて含むとは限らない | 雨、淡水、倉庫漏水及び開放荷役の範囲 |
| Breakage・Bending・Denting | ガラス、陶磁器、機械、鋼材、部品 | 列挙海難によらない通常荷役破損等が不足する | 梱包不十分、既存損傷及び免責金額 |
| Shortage・Leakage | 液体、粉体、袋物、ドラム貨物 | 通常漏損・通常減量が免責であり、事故漏損との区別が必要 | 封印、計量、容器破損、自然減耗 |
| Contamination | 食品原料、油脂、バルクケミカル | 列挙海難がなくても前荷・異物・臭気による損害が生じる | タンク洗浄、前荷、規格外及び固有の性質 |
| Sweat・Heating | 金属、農産品、食品、結露に弱い貨物 | 水浸入ではなく内部結露又は自然発熱となる場合がある | 換気、温度差、含水率、固有の性質 |
| Spontaneous Combustion | 石炭、油脂、粉体、自己発熱性貨物 | 貨物固有の性質免責との関係が問題になる | 貨物状態、積付け、温度管理及び特約範囲 |
| Institute Malicious Damage Clause | 故意の破壊、サボタージュ | ICC(B)・ICC(C)では第三者の故意による破壊が免責となる | 政治的動機の有無とStrikes Clausesとの境界 |
| Piracy Clause | 海賊多発海域、沿岸輸送 | ICC(B)・ICC(C)の列挙危険だけでは不足する可能性がある | 海賊行為、盗難、拿捕及びWar危険との区別 |
| On-Deck関連条件 | 重量物、プロジェクト貨物、甲板積み貨物 | 甲板積み、波ざらい、投荷等に個別制限があり得る | B/L表示、申告、コンテナ形状、荷主承諾 |
| Rats and Vermin | 穀物、食品、飼料、紙製品 | 害獣・虫害が列挙危険ではなく固有の性質等も問題になる | 保管状態、防鼠防虫措置、事故時期 |
担保危険を拡張しない特別約款との区別
| 特別約款 | 主な機能 | 担保危険との違い |
|---|---|---|
| Institute Replacement Clause | 機械・部品損害の修理又は交換費用の算定 | 新しい事故原因を追加するとは限らない |
| Label Clause | ラベルだけが損傷した場合の支払範囲を定める | 損害算定を制限・明確化する条項である |
| Duty Clause | 一定の輸入税負担を補償対象とする | 貨物本体の担保危険とは別の利益を対象とする |
| Sanction Limitation and Exclusion Clause | 制裁に抵触する引受・支払等を制限する | 担保危険が存在しても支払を制限する場合がある |
| Marine Cyber Endorsement | サイバー事象に関する補償又は免責を定める | ICCの一般的担保危険を修正する |
| Termination of Transit Clause (Terrorism) | 通常輸送外のテロ危険等について終期を修正する | 主として保険期間を制限・調整する |
| Institute Classification Clause | 使用船舶の基準及び追加保険料等を定める | 担保危険そのものより引受船舶条件を定める |
特別約款が付いているという事実だけで、担保危険が広がったとは判断できません。追加補償、免責、期間変更、損害算定又は引受条件のいずれを定める約款かを確認します。
MARフォームと旧S.G.フォームの位置づけ
旧S.G.フォーム時代には、All Risks、W.A.及びF.P.A.等の名称が使用され、分損、免責歩合及び海難との関係が重要な論点でした。
その後、MAR Policy FormとInstitute Cargo Clauses 1982、さらにICC2009へ移行し、ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)という構造が一般的になりました。
旧W.A.とICC(B)、旧F.P.A.とICC(C)は、歴史的に近い位置づけを説明する際に併記されることがありますが、約款内容が完全に同一であるという意味ではありません。
現在の事故を旧名称だけで判断せず、保険証券に記載された約款名、版の日付及び特別約款を確認する必要があります。MARフォーム、S.G.フォーム及び旧約款の詳細な沿革は、別記事で扱います。
L/C・売買契約との関係
L/C又は売買契約でICC(A)、ICC(B)、ICC(C)、War Risks、Strikes Risksその他の条件が指定されている場合、実際に発行された保険証券又は保険証明書が指定内容と一致しているかを確認します。
保険料を抑える目的でICC(A)からICC(C)へ変更したり、War又はStrikesを外したりした場合、貨物保険契約自体は成立していても、売買契約又はL/Cの書類要件を満たさない可能性があります。
| 確認項目 | L/C・売買契約 | 保険証券 | 不一致時の問題 |
|---|---|---|---|
| ICC条件 | A・B・C等の指定 | 実際の記載条件 | 補償不足又は書類不一致 |
| War・Strikes | 付帯要求の有無 | endorsementの有無 | 契約違反又は書類不一致 |
| 追加担保 | TPND等の要求 | 特別約款の記載 | 盗難等が無保険となる可能性 |
| 保険区間 | From/To及び指定場所 | 証券記載区間 | 輸送途中の空白 |
| 保険金額 | 110%等の指定 | 証券上の金額 | 銀行書類不一致又は回収不足 |
| 通貨 | L/C又は契約通貨 | 保険証券の通貨 | 書類不一致又は為替リスク |
事故原因から適用約款を特定する判断フロー
- 保険証券、保険証明書及びendorsementから、適用約款名と版の日付を確認する。
- ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)、ICC(Air)のどれが基本条件かを確認する。
- Institute War Clauses及びInstitute Strikes Clausesの付帯有無を確認する。
- TPND、Malicious Damage、Piracy、温度、RFWDその他の追加担保を確認する。
- 貨物に生じた物的な滅失・損傷の内容を特定する。
- 損害の発見日ではなく、可能な限り事故発生日及び事故場所を特定する。
- 水、火災、盗難、衝突、暴動等の表面的な損害名ではなく、具体的な原因を確認する。
- ICC(B)又はICC(C)の場合は、原因が列挙危険へ合理的に帰属するか確認する。
- War又はStrikesの行為者、動機、紛争及び物的損害との因果関係を確認する。
- 梱包不十分、固有の性質、通常減耗、遅延その他の免責を確認する。
- 保険期間及び事故時の被保険利益を確認する。
- 担保危険が複数競合する場合は、損害を原因別に分けて検討する。
- 運送人、倉庫業者その他の第三者への通知及び求償権を保全する。
- 保険会社又は保険代理店へ原因を断定せず、判明している事実と資料を提出する。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 主な原因 | 確認資料 | 判断のポイント | 初動対応 |
|---|---|---|---|---|
| ICC(B)貨物の盗難 | TPND未付帯又は付帯確認漏れ | 証券、封印記録、数量記録 | 列挙危険又は追加担保があるか | 警察・運送人へ通知し証券条件を確認する |
| ICC(B)貨物の雨濡れ | 海水浸入と雨濡れの混同 | 気象、コンテナ、倉庫、サーベイ | 列挙された水の浸入かRFWD等が必要か | 水の種類と浸入経路を保存する |
| ICC(C)貨物の荷役破損 | 列挙海難を伴わない通常荷役事故 | 荷役記録、映像、作業報告 | 衝突・転覆等の列挙危険へ帰属するか | 作業業者へ直ちに事故通知する |
| 暴動中の倉庫火災 | 通常火災とStrikes免責の混同 | 警察、消防、映像、報道 | 放火した者及び暴動との因果関係 | 基本ICCとStrikesを別々に確認する |
| ストライキ中の温度損害 | 作業停止による遅延 | 温度記録、運行記録、スト情報 | 直接の物的行為か遅延損害か | 代替輸送・冷却措置を直ちに検討する |
| 機雷による船体・貨物損傷 | 通常海難とWar危険の競合 | 船舶報告、当局発表、サーベイ | 遺棄兵器による損害か | 基本ICCとWar双方へ通知する |
| 海賊による貨物奪取 | War・盗難・海賊の分類誤り | 船長報告、当局記録、証券 | ICC条件及びPiracy Clauseの有無 | 海事当局・保険会社へ通知する |
| 悪意ある第三者による破壊 | 政治的動機の有無が不明 | 捜査記録、映像、犯行声明 | Malicious DamageかStrikesか | 動機を推測せず捜査資料を確保する |
| 自然発熱による火災 | 火災危険と固有の性質免責の競合 | 温度、含水率、積付け、鑑定 | 外部火源か自然発熱か | 残存貨物を分離し原因調査を行う |
| コンテナ内結露 | 水浸入とSweatの混同 | 換気、温湿度、梱包、航路 | 外部浸水か内部結露か | 濡れ方及び水分分布を記録する |
制度適用シナリオ1:横浜港輸出貨物の盗難でTPNDが付帯されていなかった場合
日本の輸出者が、1億8,000万円相当の電子部品を横浜港から輸出し、ICC(B)条件で保険を手配したとします。
海外の積替港でコンテナの封印が破られ、複数のカートンが抜き取られました。船舶の衝突、転覆、火災その他の海難事故は発生していませんでした。
輸出者は、貨物が輸送中に滅失しており、外航貨物海上保険である以上、盗難損害は補償されるべきだと主張しました。
保険会社は、ICC(B)は列挙危険方式であり、通常犯罪による盗難・荷抜きは列挙されておらず、TPNDも付帯されていないと主張しました。
この場合は、保険証券、TPNDの記載、コンテナ封印、積込数量、積替港での取扱記録及び運送人の不着証明を確認します。
貨物の不着が立証できても、ICC(B)上の担保危険又は追加担保へ該当しなければ、貨物保険から回収できない可能性があります。運送人及びターミナルへの賠償請求は、貨物保険とは別に進めます。
制度適用シナリオ2:神戸港付近の暴動で火災損害が発生した場合
日本の輸入者が、9,500万円相当の機械部品をICC(A)条件で神戸港へ輸入したとします。Institute Strikes Clausesは付帯されていませんでした。
港湾付近で暴動が発生し、暴徒が配送待ちのトラックへ火炎物を投げ込み、貨物が焼損しました。
輸入者は、ICC(A)はall risks条件であり、火災による貨物損害なので補償されると主張しました。
保険会社は、火災という損害の外形ではなく、暴動参加者の行為が原因であり、基本ICCのStrikes等危険免責に該当すると主張しました。
この場合は、消防報告、警察記録、現場映像、暴動との時間的・場所的関係及びStrikes Clausesの付帯有無を確認します。
火災が通常の機械的・電気的原因で発生した場合と、暴徒の直接行為で発生した場合では、同じ焼損でも適用約款が異なります。
制度適用シナリオ3:名古屋港向け貨物が遺棄機雷で損傷した場合
日本のcargo ownerが、2億6,000万円相当の化学プラント部品を名古屋港へ輸入し、ICC(C)及びInstitute War Clausesを付帯していたとします。
航海中、本船が過去の武力紛争で残された機雷に接触し、爆発によって船体及び貨物が損傷しました。
cargo ownerは、本船が外部物体へ接触したため、ICC(C)の衝突・接触危険により補償されると主張しました。
保険会社は、損害の原因が遺棄された機雷であり、通常ICCではWar免責となり、Institute War Clausesで処理すべき損害であると主張しました。
この場合は、船長報告、当局の兵器鑑定、事故位置、機雷の由来、War Clausesの保険期間及び各約款の保険金額・免責条件を確認します。
事故の外形が「接触」であっても、接触対象が遺棄兵器であれば、より具体的なWar危険の分類が中心となります。
フォワーダーの関与範囲
この五分類は、法令上又は業界全体で確立された法的分類ではなく、本シリーズにおいて、フォワーダーが契約及び実務上どの範囲まで関与しているかを整理するための分析上の枠組みである。
| Standard Five Classifications | 一般的な関与 | 担保危険に関する関与 | 確認すべき限界 | 主な確認資料 |
|---|---|---|---|---|
| 1. Simple Intermediary | 荷主、運送人及び保険関係者を連絡する | 貨物、航路、梱包及び事故情報を伝達する | 自ら補償可否又は最適条件を断定しない | 依頼メール、見積書、委託範囲 |
| 2. Cargo Transportation Service Provider | 集荷、保管、荷役及び配送を提供する | 作業内容、事故原因及び貨物状態を記録する | 物流作業と保険商品の説明を区別する | 作業記録、写真、倉庫記録 |
| 3. NVOCC / House B/L Issuer | House B/Lを発行し契約運送人となる | 自社運送区間及び事故情報を保険者へ提供する | 運送人賠償責任保険と荷主貨物保険を混同しない | House B/L、運送約款、事故報告 |
| 4. Door-to-Door Single Contractor | Door-to-Door輸送を一括受託する | 全輸送区間の危険情報を整理する | 一括受託が保険募集・条件確定権限を当然に与えるものではない | 一括契約、業務範囲、保険手配指示 |
| 5. Agent / Coordinator for Specific Operations | 特定地域又は作業の代理・調整を行う | 現地の暴動、War、盗難及び事故情報を収集する | 代理権、情報源及び情報確定時点を確認する | Agency Agreement、現地報告、通知記録 |
梱包、保管、検品、積付け、vanning、devanning、drayage、ラッシングその他の実作業は、五分類における具体的な受託範囲を確認するための事実である。これらの実作業は五分類を置き換えるものではなく、第六の分類も構成しない。
五分類だけで責任又は権限を決めることはできません。少なくとも、次の二点を別途確認します。
- 当該フォワーダーがContracting Carrier、Actual Carrier又は単なる手配者のいずれであるか
- 保険見積の取得、条件説明、追加担保の提案、申込取次ぎ及び事故通知について、どの範囲の委任又は権限を持つか
保険会社又は保険代理店から適切な権限を受けていないフォワーダーは、貨物の性質、航路、梱包及び事故原因等の事実を整理できますが、ICC(A)・ICC(B)・ICC(C)の選択を保険商品として推奨したり、追加担保が不要であると断定したりしないよう注意する必要があります。
事故時に確認すべき資料
| 資料 | 確認項目 | 担保危険判断の目的 | 不足する場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 保険証券・保険証明書 | ICC条件、War、Strikes、追加担保 | 契約上の担保範囲を確定する | 保険会社から契約一式を取得する |
| endorsement・特別約款 | 追加補償、免責、期間変更 | 標準ICCからの修正を確認する | 約款番号及び適用日を確認する |
| B/L・Sea Waybill・AWB | 輸送区間、甲板積み、積替え | 輸送形態及び申告内容を確認する | 運送人又はフォワーダーから取得する |
| Packing List・梱包仕様 | 梱包単位、梱包方法、固定 | TPND、荷役全損及び梱包免責を確認する | 梱包業者の作業記録を取得する |
| サーベイレポート | 事故原因、損傷形態、発生時期 | 列挙危険及び免責との因果関係を確認する | 修理・処分前に調査を依頼する |
| 温度・湿度記録 | 温度逸脱、結露、停止時間 | 外来事故、遅延又は固有の性質を区別する | 機器ログ及び運送人記録を取得する |
| 船長・運送人事故報告 | 海難、衝突、War、荷役事故 | 事故原因を列挙危険へ当てはめる | 正式な事故証明を請求する |
| 警察・消防・行政記録 | 盗難、放火、暴動、テロ、War | 行為者、動機及び原因を確認する | 現地代理店又は弁護士を通じて取得する |
| 写真・CCTV | 損傷状況、封印、浸水経路 | 事故前後の状態を立証する | 上書き前に映像を保全する |
| L/C・売買契約 | 指定保険条件及び追加担保 | 契約上必要な条件との整合を確認する | 銀行及び取引当事者へ照会する |
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| ICC(A)ならあらゆる損失が補償される | 物的な滅失・損傷を広く対象とするが、複数の免責がある | 遅延、梱包、固有の性質等を確認する |
| ICC(B)ならすべての水濡れが補償される | 列挙された水の浸入と雨・結露等は別に判断する | 水の種類と浸入経路を特定する |
| ICC(C)でも輸送中の破損はすべて補償される | 限定された列挙危険へ帰属する必要がある | 損傷結果だけでなく原因を確認する |
| 貨物が盗まれればどのICCでも補償される | ICC(B)・ICC(C)ではTPND等が必要となる場合がある | 証券の追加担保を確認する |
| 火災なら常に基本ICCで補償される | War、暴動、テロ等が原因なら別の免責・約款が働く | 出火原因と行為者を確認する |
| Strikes Clausesがあれば港湾ストライキ損害はすべて補償される | 労働力不足、遅延及び販売損失は当然には補償されない | 貨物への直接的な物的損害を確認する |
| War Clausesがあれば制裁や行政差止めも補償される | 担保War危険から生じる損害かを確認する必要がある | 差止めの法的根拠と紛争との関連を確認する |
| 海賊はすべてWar危険である | ICC条件及びPiracy Clauseの有無によって整理が異なる | 海賊、盗難、拿捕を区別する |
| 追加特約が多いほど常に有利である | 免責・期間変更・損害算定条項も特別約款に含まれる | 特約の機能を一つずつ確認する |
| 保険条件が同じなら事故時の結論も同じである | 貨物、原因、期間、被保険利益及び証拠によって結論が変わる | 案件ごとの事実認定が必要である |
判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 売買契約締結時 | 売主、買主、法務担当 | 必要なICC、War、Strikes及び追加担保 | 貨物・航路に合う条件を契約へ明記する |
| L/C発行前 | 銀行、売主、買主 | 保険条件、通貨、金額及び区間 | 曖昧な条件を具体化する |
| 保険見積時 | 保険会社、保険代理店 | 貨物、梱包、航路、輸送方法、事故実績 | 不足情報を提出して正式条件を取得する |
| ICC(B)・ICC(C)選択時 | 保険会社、cargo owner | 盗難、水濡れ、破損、汚染等の不足危険 | 必要な追加担保を検討する |
| War・Strikes付帯時 | 保険会社、保険代理店 | 危険地域、期間、料率、取消条件 | 船積前に最新条件を再確認する |
| 船積前 | freight forwarder、運送人、保険会社 | 船名、航路、甲板積み、積替え | 条件変更を保険会社へ通知する |
| 特殊貨物の手配時 | メーカー、梱包業者、保険会社 | 温度、汚染、自然発熱、修理可能性 | 貨物別条件又はsurveyを手配する |
| 事故発生直後 | 保険会社、サーベイヤー、運送人 | 損害、原因、時刻、場所及び証券条件 | 原因を断定せず証拠を保全する |
| 盗難・暴動・War事故時 | 警察、行政、保険会社、現地代理店 | 行為者、動機、紛争及び損害との因果関係 | 公的記録を速やかに取得する |
| 保険金請求時 | 保険会社、保険代理店、サーベイヤー | 担保危険、免責、保険期間、被保険利益 | 不足資料及び第三者通知を補完する |
| フォワーダーが条件を案内する時 | 保険会社、保険代理店、管理担当 | 保険募集権限及び説明可能範囲 | 権限外の推奨・断定を行わない |
| 法的争いが生じた時 | 保険会社、海事弁護士、法務担当 | 準拠法、近因、約款解釈、通知及び期限 | 権利を留保し請求期限を管理する |
海事弁護士を利用すべき場面
通常の条件確認及び事故通知は、保険会社又は保険代理店と進めます。ただし、次の場合は、海上保険及び国際取引に詳しい弁護士への相談を検討します。
- ICC(A)のall risksと免責危険の境界が争われている場合
- ICC(B)又はICC(C)の列挙危険への因果関係が争われている場合
- 火災、衝突、水濡れ等にWar又はStrikes危険が競合している場合
- 暴動、テロ、悪意ある行為の行為者又は動機が不明な場合
- 海賊、拿捕、通常盗難又は行政差止めの分類が争われている場合
- 梱包不十分、固有の性質又は遅延免責が主張されている場合
- 追加担保が有効に付帯されていたか争われている場合
- L/C指定条件と保険証券の不一致により売買損害が発生した場合
- フォワーダー又は他の関係者による保険条件説明の権限が争われている場合
- 外国保険者が外国法、外国裁判管轄又は外国仲裁を主張している場合
- 保険金請求期限、運送人通知期限又は出訴期限が迫っている場合
担保危険に関する争いでは、事故原因を単純な名称だけで整理せず、損害発生までの事実関係、複数原因の競合及び各約款の具体的文言を確認します。
貨物保険上の補償可否を保険会社と協議している場合でも、運送人、倉庫業者、荷役業者その他の第三者への通知及び求償権保全を省略しないことが重要です。
まとめ
外航貨物海上保険の担保危険は、基本となるICC(A)・ICC(B)・ICC(C)又はICC(Air)に、必要に応じてInstitute War Clauses、Institute Strikes Clauses及び追加担保を組み合わせて構成されます。
ICC(A)は免責事項を除くall risks方式です。ICC(B)及びICC(C)は列挙危険方式であり、ICC(B)は地震、噴火、雷、波ざらい、水の浸入及び荷役中の梱包1個の全損等を含む点でICC(C)より広い条件です。
War及びStrikes等危険は、通常のICCでは免責となるため、別約款の付帯を確認します。ただし、War又はStrikesの名称が関係する出来事であっても、遅延、労働力不足、販売損失又は航海目的の達成不能が当然に補償されるわけではありません。
ICC(B)又はICC(C)では、盗難・不着、水濡れ、破損、汚染、悪意ある行為及び海賊等について、TPND、RFWD、Malicious Damage、Piracyその他の追加担保が必要となる場合があります。
本記事の一般的な判断は、一輸送ごとの貨物保険、包括予定保険、CIF・CIP、FOB・FCA及びL/C取引における担保危険の確認へ適用できます。一方、国内運送保険、保険会社独自約款、旧約款、貨物別約款、長期倉庫保管及び運送人賠償責任保険には、そのまま適用せず、個別契約を優先して確認します。
事故時には、損害の外形だけでなく具体的な原因を確認し、基本ICC、War、Strikes、追加担保及び免責のどこへ当てはまるかを整理します。
最終的な補償可否は、保険証券、適用約款、endorsement、保険期間、被保険利益、事故原因及び立証資料を一体として判断する必要があります。
