食品表示法―輸入食品の表示義務と確認事項
食品表示法とは
食品表示法とは、食品の表示に関する基本的な枠組みを定める法律です。
食品を摂取する際の安全性を確保し、消費者が食品を自主的かつ合理的に選択できるようにすることを目的としています。
食品表示法そのものは、個々のラベル表示の細目をすべて直接定めているわけではありません。実際に、名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示、保存方法、原産地、アレルゲン、栄養成分などをどのように表示するかは、食品表示法に基づく食品表示基準で具体的に定められています。
そのため、実務では「食品表示法」は食品表示制度の基本法、「食品表示基準」はラベル作成・表示確認の具体的なルールとして整理すると分かりやすくなります。
この記事で扱う範囲
| 扱う内容 | この記事での整理 | 別テーマとして確認すべき内容 |
|---|---|---|
| 食品表示法の基本 | 食品表示制度の目的、位置づけ、食品表示基準との関係を整理します。 | 具体的なラベル項目は食品表示基準の記事で確認します。 |
| 食品表示制度の全体像 | 基本表示、安全性表示、品質・原産地表示、栄養表示、保健機能食品、広告表示を整理します。 | 各表示項目の詳細は、栄養成分表示、アレルゲン表示、原料原産地表示などで確認します。 |
| 食品表示法と食品表示基準の違い | 法律としての食品表示法と、実務基準としての食品表示基準を分けて整理します。 | 通知、Q&A、ガイドライン、個別相談は必要に応じて確認します。 |
| 輸入食品での位置づけ | 通関書類、海外ラベル、日本語表示、販売表示の違いを整理します。 | 輸入食品届出、食品衛生法、通関、検疫は別制度として確認します。 |
| 広告・販売表示との関係 | ラベル表示と、ECページ、広告、SNS、店頭POPの表現の違いを整理します。 | 景品表示法、健康増進法、薬機法は別制度として確認します。 |
| 違反・不備が問題になる場面 | 表示漏れ、誤表示、輸入後のラベル修正、販売停止、回収リスクを整理します。 | 具体的な行政対応、回収要否、取引先対応は個別確認が必要です。 |
| フォワーダー・輸入者の実務 | 物流側が注意すべき資料不足、ラベル貼付、通関と販売表示の切り分けを整理します。 | 表示適法性の最終判断は、輸入者、表示責任者、専門家、所管行政に確認します。 |
制度の目的・背景
食品表示法は、食品表示制度の基本となる法律です。食品を安全に摂取できるようにすること、消費者が食品を自主的かつ合理的に選択できるようにすることを目的としています。
食品表示は、単なる商品説明ではありません。アレルゲン、消費期限、保存方法、加熱の必要性などは、消費者の安全に直結します。また、名称、原材料名、添加物、内容量、原産地、栄養成分表示などは、消費者が商品を比較し、選択するための重要な情報です。
食品表示法の下では、具体的な表示事項や表示方法は食品表示基準で定められます。したがって、実務では食品表示法で制度全体の位置づけを確認し、食品表示基準で個別の表示事項を確認する流れになります。
食品表示法が適用される場面
| 場面 | 確認対象 | 問題になりやすい点 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 国内で食品を販売する場合 | 加工食品、生鮮食品、添加物、輸入食品 | 必要表示事項を確認せず販売すること | 食品表示基準に基づく表示確認が必要です。 |
| 輸入食品を販売する場合 | 海外ラベル、規格書、成分表、日本語ラベル案 | 海外ラベルを翻訳するだけで足りると誤解すること | 日本の食品表示制度に合わせて再構成します。 |
| アレルゲンや期限表示が関係する場合 | 特定原材料、消費期限、賞味期限、保存方法、加熱表示 | 安全性に関わる表示漏れや誤表示 | 消費者の健康被害につながるため厳格に確認します。 |
| 原産地や原材料を表示する場合 | 原産国名、原料原産地、原材料名、添加物 | 通関上の原産国と食品表示上の原産地を混同すること | 輸入申告資料と販売表示を分けて確認します。 |
| 健康・機能性を表示する場合 | 栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品 | 一般食品で健康効果を過度に訴求すること | 食品表示法だけでなく、健康増進法、薬機法、景品表示法も確認します。 |
| ECページや広告で販売する場合 | 商品ページ、広告、SNS、店頭POP、パンフレット | ラベル表示と広告表示がずれること | 容器包装表示と広告表示を別々に確認します。 |
| 倉庫や流通加工でラベル貼付を行う場合 | 日本語ラベル、貼付対象、ロット、作業指示、記録 | 表示判断責任と貼付作業責任が混同されること | 輸入者の表示判断と物流側の作業責任を分けます。 |
適用要件・対象外になりやすいもの
| 区分 | 内容 | 確認するポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 適用対象になりやすいもの | 食品関連事業者等が販売する食品、添加物などです。 | 食品区分、販売形態、事業者、消費者向け販売かを確認します。 | 輸入食品でも国内販売する場合は確認が必要です。 |
| 具体表示は食品表示基準で確認するもの | 名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示、保存方法、栄養成分表示などです。 | 対象食品、表示事項、表示方法、表示禁止事項を確認します。 | 食品表示法だけではラベルの細目は完成しません。 |
| 安全性に関わる表示 | アレルゲン、消費期限、保存方法、加熱の必要性、使用上の注意などです。 | 健康被害につながる可能性、表示漏れ、誤表示を確認します。 | 不備があると販売停止や回収につながりやすい項目です。 |
| 消費者選択に関わる表示 | 名称、原材料、添加物、原産国、内容量、栄養成分などです。 | 消費者が商品内容を誤認しないかを確認します。 | 通関資料と販売用表示を混同しないよう注意します。 |
| 対象外と即断しにくいもの | 試供品、ノベルティ、業務用食品、催事販売、EC限定販売などです。 | 販売・提供の実態、消費者への提供有無、包装形態を確認します。 | 名称や数量だけで対象外と判断しないようにします。 |
| 食品表示法だけで完結しないもの | 健康食品、酒類、医薬品的訴求品、機能性表示食品、輸入食品などです。 | 景品表示法、健康増進法、薬機法、酒税法、食品衛生法との関係を確認します。 | ラベル、広告、輸入手続を分けて確認します。 |
| 物流会社が判断すべきでないもの | 表示適法性、広告適法性、食品区分、責任表示の最終判断です。 | 輸入者、販売者、表示責任者、専門家に確認します。 | フォワーダーは注意喚起と資料整理にとどめます。 |
食品表示法と食品表示基準の関係
食品表示法と食品表示基準は、同じものではありません。食品表示法は制度の基本となる法律であり、食品表示基準はその法律に基づいて定められた具体的な表示ルールです。
| 区分 | 役割 | 実務上の見方 | 確認する場面 |
|---|---|---|---|
| 食品表示法 | 食品表示制度の目的、基本的な枠組み、行政上の措置、違反時の対応などを定める法律です。 | 食品表示制度全体の入口として確認します。 | 制度全体の位置づけや責任を理解する場面です。 |
| 食品表示基準 | 食品に表示すべき事項、表示方法、表示禁止事項などを具体的に定める基準です。 | 実際にラベルや容器包装を作成・確認する際の中心ルールです。 | 名称、原材料、添加物、期限、栄養成分などを確認する場面です。 |
| 通知・Q&A・ガイドライン | 食品表示基準の解釈、運用、具体例を補足する資料です。 | 判断に迷う場合や実務処理を行う場合に確認します。 | 個別事例や例外、運用確認が必要な場面です。 |
食品表示法が目指すもの
| 目的 | 関係する表示 | 実務上の意味 | 問題になりやすい例 |
|---|---|---|---|
| 食品を摂取する際の安全性の確保 | アレルゲン表示、消費期限、保存方法、加熱の必要性、使用上の注意など | 消費者の健康被害を防ぐための表示です。 | アレルゲン漏れ、期限誤表示、保存方法の不備です。 |
| 消費者の自主的・合理的な食品選択の確保 | 名称、原材料名、添加物、原料原産地名、原産国名、内容量、栄養成分表示など | 消費者が商品内容を理解し、比較・選択するための表示です。 | 原材料の誤表示、原産地の誤認、栄養成分の誤表示です。 |
食品表示制度の全体像
| 分野 | 主な内容 | 主な確認制度・記事 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 基本表示 | 名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示、保存方法、製造者・輸入者など | 食品表示基準 | ラベル作成の中心となる項目です。 |
| 安全性に関する表示 | アレルゲン、消費期限、保存方法、加熱の必要性など | アレルゲン表示、賞味期限と消費期限 | 健康被害につながるため、特に厳格に確認します。 |
| 品質・原産地に関する表示 | 原料原産地名、原産国名、生鮮食品の原産地など | 原料原産地表示、原産地表示と通関書類 | 通関上の原産国と食品表示上の原産地を混同しないようにします。 |
| 栄養に関する表示 | 熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量など | 栄養成分表示 | 輸入食品では海外Nutrition Factsを日本基準に合わせます。 |
| 保健機能食品 | 栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品など | 機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品 | 届出、許可、基準適合、広告表現を分けて確認します。 |
| 広告・販売表現 | 優良誤認表示、健康効果の訴求、ECページ・SNS・広告表現など | 景品表示法、健康増進法、優良誤認表示 | ラベルが適正でも広告が過大なら問題になります。 |
加工食品・生鮮食品・添加物と保健機能食品の関係
食品表示基準では、表示対象を大きく加工食品、生鮮食品、添加物に分けて整理します。
一方で、実務では保健機能食品という言葉もよく使われます。保健機能食品とは、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品など、健康や栄養に関する機能表示制度に関係する食品の総称です。
したがって、保健機能食品は、加工食品・生鮮食品・添加物という基本分類と並ぶ単純な第四分類ではありません。まず食品としての基本区分を確認し、そのうえで健康・栄養に関する機能表示を行うかどうかを確認するのが実務上の順序です。
| 分類軸 | 内容 | 確認の仕方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 食品の基本区分 | 加工食品、生鮮食品、添加物 | 食品表示基準上、どの表示事項が必要かを確認します。 | 名称、原材料、添加物、期限、保存方法などの基本表示を確認します。 |
| 機能表示制度上の区分 | 栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品など | 健康や栄養に関する表示ができる制度か、届出・許可・根拠資料が必要かを確認します。 | 基本表示に加えて、制度ごとの要件を確認します。 |
他制度との比較表
| 制度 | 主な目的 | 主な確認対象 | 食品表示法との違い | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 食品表示法 | 食品表示制度の基本的な枠組みを定める法律です。 | 食品表示制度全体、安全性確保、消費者選択のための表示 | 制度全体の入口となる基本法です。 | 具体的なラベル項目は食品表示基準で確認します。 |
| 食品表示基準 | 食品に表示すべき事項、表示方法、表示禁止事項を具体的に定める基準です。 | 名称、原材料、添加物、期限、保存方法、栄養成分など | 食品表示法に基づく具体的な実務基準です。 | ラベル作成では中心的に確認します。 |
| 食品衛生法 | 食品の安全性、輸入届出、規格基準、衛生管理を確認する制度です。 | 輸入食品届出、検疫所検査、食品添加物、器具、容器包装など | 食品表示ではなく、食品の安全性や輸入時確認を扱います。 | 輸入検査に通っても販売表示が適法とは限りません。 |
| 景品表示法 | 消費者に誤認を与える不当表示を防ぐ制度です。 | 広告、ECページ、販売表示、品質訴求、価格表示 | ラベル表示だけでなく広告上の誤認表示も確認します。 | ラベルが適正でも広告が過大なら問題になります。 |
| 健康増進法 | 健康保持増進効果などの虚偽・誇大表示を防ぐ制度です。 | 健康食品、サプリメント、健康効果をうたう広告 | 食品表示よりも健康効果の訴求内容が問題になります。 | 健康効果を印象づける広告表現に注意します。 |
| 薬機法 | 医薬品的効能効果や医薬品該当性を規制する制度です。 | 疾病の治療・予防、身体機能への強い作用、医薬品的広告 | 食品であっても医薬品的表現を行うと問題になります。 | 健康食品やサプリメントでは特に確認します。 |
| 酒税法・酒類表示 | 酒類の税務、表示、販売管理に関する制度です。 | 酒類の品目、アルコール分、表示、販売条件など | 食品表示法だけでは酒類特有の表示を確認しきれない場合があります。 | 酒類では国税庁関連情報も確認します。 |
輸入食品における食品表示法の位置づけ
輸入食品では、海外メーカーのラベル、規格書、成分表、インボイス、パッキングリストなどを確認します。しかし、それらの資料をそのまま日本国内向け表示として使えるとは限りません。
輸入手続で必要な書類と、国内販売時に必要な食品表示は、目的が異なります。通関が完了していても、日本国内で販売するラベル表示が食品表示法・食品表示基準に適合しているとは限りません。
そのため、輸入食品では、対象商品が加工食品、生鮮食品、添加物のどれに該当するか、日本語表示に必要な原材料情報、添加物情報、アレルゲン情報がそろっているか、原産国名、原料原産地名、通関上の原産国を混同していないかを確認する必要があります。
広告・販売表示との関係
食品表示法は、主に食品の容器包装やラベルなどの表示に関係します。しかし、食品の販売では、ラベル表示だけでなく、広告、ECページ、パンフレット、店頭POP、SNS投稿なども消費者の判断に影響します。
そのため、広告・販売表示では、食品表示法だけでなく、景品表示法や健康増進法なども確認する必要があります。
| 場面 | 主な確認法令 | 注意点 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 容器包装・ラベル | 食品表示法、食品表示基準 | 必要表示事項、表示方法、表示禁止事項を確認します。 | 日本語表示案とラベル原稿を確認します。 |
| 商品ページ・広告・チラシ | 景品表示法、健康増進法など | 優良誤認表示、根拠のない健康効果の訴求、誇大表示に注意します。 | 広告文と根拠資料を確認します。 |
| パッケージ上の強調表示 | 食品表示法、景品表示法、健康増進法など | ラベル上の表現であっても、広告的な訴求を含む場合は他法令の確認が必要です。 | 一括表示とキャッチコピーを別々に確認します。 |
制度適用フロー
- 対象商品が食品、添加物、加工食品、生鮮食品、業務用食品のどれに該当するかを確認します。
- 日本国内で一般消費者向けに販売する商品か、業務用か、試供品・ノベルティかを確認します。
- 食品表示法上の表示制度に関係する商品かを確認します。
- 食品表示基準に基づき、必要表示事項、表示方法、表示禁止事項を確認します。
- 名称、原材料名、添加物、内容量、期限表示、保存方法、製造者・輸入者名など基本表示を確認します。
- アレルゲン、原料原産地、栄養成分、賞味期限・消費期限など個別表示項目を確認します。
- 健康や機能性に関する表示を行う場合、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品との関係を確認します。
- 輸入食品の場合、海外ラベル、規格書、成分表、通関書類、日本語表示案の整合を確認します。
- 広告、ECページ、SNS、販促資料の表現について、景品表示法、健康増進法、薬機法との関係を確認します。
- 問題がある場合は、販売開始前に表示修正、資料追加、専門確認、ラベル貼付指示の見直しを行います。
実務で問題になりやすいケース
| ケース | 問題点 | 確認すべき事項 | 実務対応 |
|---|---|---|---|
| 食品表示法だけを見てラベルを作ろうとする | 具体的な表示事項や表示方法は食品表示基準で確認する必要があります。 | 食品表示基準、通知、Q&A、ガイドライン | 食品表示法と食品表示基準を分けて確認します。 |
| 海外ラベルを翻訳してそのまま販売する | 日本の食品表示項目、表示順、添加物、アレルゲンに合わない場合があります。 | 海外ラベル、規格書、配合表、成分表、アレルゲン情報 | 日本向け表示として再構成します。 |
| 通関完了後に表示不備が見つかる | 通関と国内販売表示は目的が異なります。 | 輸入申告、食品届、日本語ラベル、販売表示 | 輸入計画段階で表示確認を行います。 |
| アレルゲン表示に漏れがある | 消費者の健康被害につながる重大な表示不備です。 | 原材料、製造工程、コンタミネーション、特定原材料 | 販売前に表示修正し、必要に応じて出荷を止めます。 |
| 原産国表示と通関上の原産国を混同する | 関税・EPA上の原産国と食品表示上の原産国・原料原産地は目的が異なります。 | 製造国、輸出国、原材料産地、通関書類、表示案 | 通関資料と販売表示を分けて確認します。 |
| 健康食品の広告が過大になる | 食品表示法だけでなく、健康増進法、薬機法、景品表示法の問題になります。 | 広告文、ECページ、SNS、効能表現、根拠資料 | ラベル表示と広告表現を別々に確認します。 |
| ラベル貼付作業で表示責任が曖昧になる | 物流会社の作業責任と輸入者の表示判断責任が混同されます。 | ラベル原稿、貼付指示、対象ロット、作業記録、責任範囲 | 表示判断責任と貼付作業責任を分けます。 |
| 販売開始後に広告とラベルの不一致が判明する | ラベルは適正でも、広告が消費者に誤認を与える場合があります。 | 商品ラベル、ECページ、広告、SNS、店頭POP | 媒体横断で表示内容を確認します。 |
実務シナリオ1:輸入食品の通関後に日本語ラベル不備が見つかる場合
輸入食品では、通関が完了した後に、日本語ラベルの不備が見つかることがあります。たとえば、アレルゲン表示が漏れている、原材料名の順序が日本基準に合っていない、添加物表示が不適切である、輸入者名が不明確であるといった場面です。
通関が終わっていることは、国内販売時の食品表示が適切であることを意味しません。通関手続と食品表示法・食品表示基準に基づく販売表示確認は、目的が異なる別の実務です。
この場合、販売停止、ラベル修正、再貼付、在庫確認、出荷済み商品の確認、取引先への説明が必要になる場合があります。輸入食品では、通関後ではなく、輸入計画の段階で日本語表示案を作成し、販売前に確認することが重要です。
実務シナリオ2:健康食品の広告が食品表示の範囲を超える場合
健康食品やサプリメントを販売する際に、ラベル上は一般食品として表示している一方で、ECページやSNSで「病気を予防する」「飲むだけで改善」「薬の代わりになる」といった表現を使ってしまう場合があります。
この場合、食品表示法だけでなく、健康増進法、薬機法、景品表示法の問題に広がる可能性があります。食品として販売する商品であっても、広告表現が医薬品的効能や虚偽・誇大表示に近づくと、別制度上の確認が必要になります。
実務上は、商品ラベル、ECページ、広告画像、SNS投稿、動画、店頭POPを並べて確認します。食品表示制度上の表示と、広告・販売表現を分けて確認することが重要です。
実務シナリオ3:倉庫で日本語ラベル貼付を行う場合
輸入食品では、保税倉庫や国内倉庫、流通加工拠点で日本語ラベルを貼付することがあります。この場合、倉庫やフォワーダーは作業を担当することがありますが、表示内容の適法性を最終判断する立場ではありません。
問題になりやすいのは、輸入者が作成したラベル原稿、貼付対象ロット、貼付位置、賞味期限、輸入者名、対象商品が一致していない場合です。作業現場で判断して修正すると、誤表示や責任範囲の混同につながる可能性があります。
実務上は、ラベル原稿、貼付指示書、対象商品、ロット、期限、作業記録、最終確認者を明確にします。表示判断は輸入者側、貼付作業は物流側という役割分担を明確にしておくことが重要です。
4列判断チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 輸入計画時 | 輸入者、販売者、海外メーカー | 食品区分、販売形態、一般用か業務用か、国内販売の有無 | 食品表示制度の対象かを整理します。 |
| 表示制度の全体像を確認するとき | 輸入者、表示担当、専門家 | 食品表示法、食品表示基準、関連する個別表示制度 | 食品表示法だけでなく食品表示基準まで確認します。 |
| 海外メーカー資料を取得するとき | 海外メーカー、輸入者、品質担当 | 海外ラベル、規格書、配合表、成分表、製造工程、アレルゲン情報 | 不足資料を船積前に追加取得します。 |
| 日本語表示案を作成するとき | 輸入者、表示担当、専門家 | 名称、原材料、添加物、期限、保存方法、輸入者名、栄養成分 | 海外ラベルの直訳ではなく、日本基準に合わせて作成します。 |
| 安全性に関わる表示を確認するとき | 輸入者、品質担当、海外メーカー | アレルゲン、消費期限、保存方法、加熱の必要性、使用上の注意 | 不備がある場合は販売開始前に修正します。 |
| 広告・ECページを作るとき | 販売担当、広告担当、輸入者、専門家 | 健康訴求、無添加、天然、No.1、機能性、景品表示法・健康増進法との関係 | ラベル表示と広告表示を別々に確認します。 |
| ラベル貼付作業を行うとき | 輸入者、倉庫、フォワーダー、流通加工業者 | ラベル原稿、貼付対象、貼付位置、ロット、期限、作業記録 | 表示判断責任と作業責任を分けます。 |
| 販売開始前の最終確認 | 輸入者、表示担当、販売担当、品質担当、専門家 | ラベル、ECページ、広告、SNS、店頭POP、販売資料の整合性 | 媒体間でずれがあれば、販売前に修正します。 |
よくある誤解
| 誤解 | 正しい理解 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 食品表示法を見ればラベルが作れる | 食品表示法は制度の基本法であり、具体的なラベル表示の細目は食品表示基準で確認します。 | 食品表示基準、通知、Q&A、ガイドラインも確認します。 |
| 食品表示基準の記事と食品表示法の記事は同じである | 食品表示法は制度全体の入口、食品表示基準は具体的な表示ルールです。 | 制度理解とラベル作成実務を分けます。 |
| 通関が終われば表示も問題ない | 通関手続と国内販売時の食品表示確認は別の問題です。 | 輸入申告情報と消費者向けラベル情報を分けて確認します。 |
| 広告表現は食品表示法とは無関係である | 広告やECページの表現は、景品表示法や健康増進法の問題になることがあります。 | ラベル表示と広告表現を分けて確認します。 |
| 海外ラベルを翻訳すれば日本向け表示になる | 海外ラベルは、日本の食品表示基準に合わせて再構成する必要があります。 | 原材料、添加物、アレルゲン、期限、原産地を日本基準で確認します。 |
| 一般食品なら健康表現の確認は不要である | 一般食品でも広告で健康効果を強く訴求すると、別制度上の問題になります。 | 健康増進法、薬機法、景品表示法との関係を確認します。 |
| 物流会社がラベルを貼れば表示内容も物流会社が保証したことになる | ラベル貼付作業と表示内容の適法性判断は別です。 | 輸入者の表示判断と物流側の作業責任を分けます。 |
実務上のポイント
食品表示法は、個別表示事項を確認する前の入口です。まず制度全体の位置づけを理解し、そのうえで食品表示基準や各論記事に進むことで、確認漏れを防ぐことができます。
輸入食品では、海外で販売されているラベル、規格書、成分表、通関資料をそのまま国内販売表示として使うことはできません。日本で販売する場合は、食品表示法と食品表示基準に基づき、日本語表示を確認する必要があります。
食品表示は、通関、倉庫、販売、広告の各担当者が別々に判断すると、表示漏れや誤表示が起きやすくなります。輸入計画の段階から、食品区分、必要表示事項、広告表現、ラベル貼付作業を一体で確認することが重要です。
記録保存の重要性
食品表示法への対応では、どの資料を根拠に表示判断を行ったかを記録しておくことが重要です。輸入食品では、海外ラベル、規格書、成分表、配合表、アレルゲン情報、原産地資料、期限表示根拠、日本語表示案、広告確認記録を整理しておく必要があります。
保存しておくべき資料には、海外メーカー資料、日本語ラベル案、食品表示基準に基づく確認記録、専門家確認記録、ECページ案、広告原稿、ラベル貼付指示書、作業記録、修正履歴、販売開始前確認記録などがあります。
記録が残っていれば、表示内容の根拠、修正経緯、販売前確認の状況を説明しやすくなります。逆に、記録が不足している場合、表示内容が実態に合っていても、後から説明が難しくなることがあります。
まとめ
食品表示法は、食品表示制度の基本となる法律です。食品を安全に摂取できるようにし、消費者が適切に食品を選択できるようにするための制度の土台になります。
一方で、実際にラベルや容器包装に何をどのように表示するかは、食品表示基準や関連する通知、Q&A、ガイドラインで具体的に確認します。
本記事では食品表示法を「制度全体の入口」として理解し、具体的な表示事項は食品表示基準、栄養成分表示、原料原産地表示、アレルゲン表示、機能性表示食品、特定保健用食品、景品表示法などの各論記事で確認する流れを押さえることが重要です。
