輸入食品のアレルゲン表示―日本向け確認ポイント

Allergen Labeling for Imported Food — Japan-Specific Checks

アレルゲン表示とは

アレルゲン表示とは、食物アレルギーの原因となる原材料が食品に含まれている場合に、その情報を容器包装などに表示する制度です。食物アレルギーを持つ消費者が、食品を安全に選択できるようにするための重要な表示です。

食品表示法および食品表示基準では、アレルギー表示の対象となる品目が定められています。法令上は「アレルギー表示」という表現が使われますが、実務では「アレルゲン表示」と呼ばれることも多く、本記事では両者を同じ意味で扱います。

輸入食品実務では、海外ラベルや海外メーカーのアレルゲン表をそのまま日本語に翻訳するだけでは足りない場合があります。日本の表示対象品目、表示方法、代替表記、拡大表記、複合原材料、加工助剤、コンタミネーション情報を確認し、日本向け表示として整理する必要があります。

この記事で扱う範囲

アレルゲン表示は、食品表示法、食品表示基準、食品衛生法、輸入食品実務、広告表示、EC販売表示などと関係します。この記事では、輸入食品を日本で販売する際に必要となるアレルゲン表示の実務確認を中心に扱い、栄養成分表示原料原産地表示、薬機法上の効能表現などは関連する記事に委ねます。

項目 この記事で扱う内容 他の記事で詳しく扱う内容
アレルゲン表示の基本 食物アレルギーの原因となる原材料を、消費者が確認できるよう表示する制度であることを説明します。 食品表示制度全体の構造は「食品表示法」で詳しく扱います。
対象品目 特定原材料と特定原材料に準ずるものの違い、2026年4月時点の対象品目を整理します。 食品表示基準の詳細や改正履歴は食品表示基準関連の記事で扱います。
輸入食品での確認 海外メーカーから取得すべき原材料表、アレルゲン表、製造工程情報、コンタミネーション情報を扱います。 輸入食品届出、検疫所審査、食品衛生法上の確認は「輸入食品届出」「食品衛生法」で扱います。
複合原材料・添加物由来 ソース、シーズニング、香料、添加物、加工助剤などに含まれるアレルゲンの見落としを扱います。 添加物の制度上の確認は「食品添加物」で詳しく扱います。
表示方法 個別表示、一括表示、代替表記、拡大表記、表示漏れ防止の考え方を整理します。 具体的な表示レイアウトや他の義務表示事項は食品表示実務の記事で扱います。
広告・EC表示との関係 アレルゲン不使用、グルテンフリー、乳不使用などの表示根拠と広告上の注意点を扱います。 優良誤認表示、薬機法上の効能表現、機能性表示食品は各制度記事で扱います。

制度の目的・背景

アレルゲン表示の目的は、食物アレルギーを持つ消費者が、原因となる原材料を含む食品を避け、安全に食品を選択できるようにすることです。食物アレルギーは、少量の摂取でも重い健康被害につながることがあるため、表示の正確性は食品表示の中でも特に重要です。

食品表示制度では、健康危害の発生状況や重篤度などを踏まえ、表示義務の対象となる「特定原材料」と、表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」が定められています。特定原材料は義務表示であり、対象品目を含む場合には表示が必要です。

輸入食品では、海外メーカーの表示制度と日本の表示制度が一致しないことがあります。海外では表示対象でない品目が日本では表示対象となる場合や、海外ラベル上は「nuts」「milk」「flavor」などの包括的な表記であっても、日本向け表示では個別確認が必要になる場合があります。

制度が適用される場面

アレルゲン表示は、容器包装された加工食品の販売時に特に問題になります。輸入食品では、輸入時の食品衛生法確認とは別に、日本国内で販売する際の表示として、アレルゲン情報を正確に反映する必要があります。

場面 該当しやすい食品 確認の中心 実務上の注意点
加工食品を輸入販売する場合 菓子、飲料、調味料、冷凍食品、レトルト食品 原材料、添加物、複合原材料中のアレルゲン 海外ラベルの翻訳だけでなく、日本の対象品目に照らして確認します。
菓子・チョコレートを輸入する場合 チョコレート、クッキー、ナッツ菓子、焼菓子 乳、小麦、卵、ナッツ類、落花生、カシューナッツ、ピスタチオ 複合原材料や同一ライン製造による混入可能性にも注意します。
健康食品・サプリメントを輸入する場合 錠剤、カプセル、粉末、プロテイン、栄養補助食品 ゼラチン、乳、大豆、小麦、ナッツ、添加物由来原料 食品表示だけでなく、薬機法上の広告表現も別途確認します。
業務用食品を輸入する場合 業務用ソース、シーズニング、冷凍食材、製菓原料 業務用表示、納品先へのアレルゲン情報伝達 最終製品での表示に影響するため、原料段階の情報が重要です。
ECサイトで販売する場合 輸入食品全般、ギフト食品、定期購入食品 容器包装表示とWeb表示の整合性 商品ページ、広告、画像内表示で不一致がないか確認します。
不使用・フリー表示を行う場合 グルテンフリー、乳不使用、卵不使用、ナッツ不使用食品 根拠資料、製造工程管理、コンタミネーション管理 消費者に安全性を過大に誤認させない表現にします。

対象品目の整理

アレルゲン表示では、表示義務の対象である「特定原材料」と、表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」を分けて確認します。2026年4月1日の改正により、カシューナッツが特定原材料に追加され、ピスタチオが特定原材料に準ずるものに追加されています。

区分 位置づけ 対象品目 輸入実務での注意点
特定原材料 表示義務 えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生、カシューナッツ 含有する場合は表示漏れが重大な問題になります。海外ラベルにない場合でも、日本基準で確認します。
特定原材料に準ずるもの 表示推奨 アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン 義務表示ではありませんが、可能な限り表示する実務が求められます。輸入食品では表示方針を事前に決めます。
ナッツ類 品目ごとの扱いに注意 くるみ、落花生、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオなど 「nuts」と一括されている海外資料では、日本の対象品目ごとに分解確認が必要です。
乳・卵・小麦 加工食品で頻出 乳成分、卵、小麦、パン粉、乳化剤由来原料、加工でん粉等 主要原材料だけでなく、複合原材料や加工助剤も確認します。
水産・畜産由来 原料由来確認が重要 えび、かに、いか、いくら、さけ、さば、牛肉、鶏肉、豚肉、ゼラチン エキス、だし、調味料、カプセル材、ゼラチン由来を見落とさないようにします。
果実・植物由来 調味料・菓子・飲料で注意 オレンジ、キウイフルーツ、バナナ、もも、りんご、やまいも、ごま、大豆 香料、ピューレ、濃縮果汁、調味料、たれの中に含まれる場合があります。

適用要件・対象外になりやすいもの

アレルゲン表示が必要かどうかは、対象品目が食品に含まれているか、容器包装された加工食品として販売されるか、表示義務または推奨表示の対象かによって判断します。原材料として直接使われている場合だけでなく、複合原材料、添加物、加工助剤、キャリーオーバーも確認対象になることがあります。

区分 表示確認が必要になりやすい考え方 対象外または別確認になりやすい考え方 確認すべき資料・情報
対象食品 容器包装された加工食品として販売されるもの 外食、対面販売、ばら売りなど、制度上の表示義務の扱いが異なるもの 販売形態、包装形態、商品ラベル、販売ページ
原材料として使用 特定原材料や準ずるものが原材料に含まれる 対象品目を含まないことが資料で確認できるもの 原材料表、配合表、アレルゲン表
複合原材料 ソース、シーズニング、ミックス粉、香料製剤などに対象品目が含まれる 複合原材料の内訳に対象品目がないことが確認できるもの 複合原材料の内訳、原料規格書、製造者証明
添加物・加工助剤由来 添加物や加工助剤の由来原料に乳、小麦、大豆、ゼラチン等が関係する 化学的に精製され、対象品目由来の表示が問題にならないことが確認できるもの 添加物規格書、由来原料資料、製造工程表
コンタミネーション 同一工場、同一ライン、共用設備で対象品目を扱う 原材料として含まれず、管理上混入可能性が合理的に低いもの 製造ライン情報、清掃手順、アレルゲン管理表
広告・不使用表示 アレルゲン不使用、グルテンフリー、乳不使用などを表示する 単に原材料表示として対象品目を記載するだけの場合 検査成績書、製造工程管理、コンタミネーション管理資料

他制度との比較

アレルゲン表示は食品表示法・食品表示基準に基づく表示制度です。食品衛生法上の輸入届出、食品添加物の使用可否、栄養成分表示、機能性表示、景品表示法や薬機法上の広告規制とは目的が異なります。

制度・確認分野 主な目的 アレルゲン表示との関係 実務上の注意点
アレルゲン表示 食物アレルギーを持つ消費者が原因原材料を避けられるようにする 特定原材料・特定原材料に準ずるものの含有情報を表示します。 表示漏れは健康被害や回収につながる可能性があります。
食品表示法 食品の品質、衛生、安全、消費者選択に必要な表示を定める アレルゲン表示の根拠となる制度です。 原材料名、添加物、栄養成分表示などと整合させます。
食品衛生法 食品等の安全性、規格基準、輸入届出、検査を扱う 輸入時確認とは別に、販売表示としてアレルゲン表示を確認します。 食品等輸入届出が通っても、表示が正しいとは限りません。
食品添加物規制 添加物の使用可否、使用基準、規格を確認する 添加物や加工助剤の由来原料がアレルゲン確認に関係することがあります。 添加物名だけでなく、由来原料や複合原材料を確認します。
景品表示法 消費者に誤認を与える表示・広告を防止する アレルゲン不使用、グルテンフリー、安心・安全訴求で問題になります。 根拠資料が不十分な不使用表示は避けます。
薬機法 医薬品的効能効果や身体への作用をうたう表示を規制する アレルギー改善、免疫改善などの表現を行う場合に問題になります。 食品表示と広告表現を分けて確認します。

表示方法の考え方

アレルゲン表示は、原材料名欄の中で個別に表示する方法や、まとめて一括表示する方法があります。実際の表示では、原材料名、添加物、複合原材料、代替表記、拡大表記を確認します。

輸入食品では、海外表示をそのまま翻訳するだけでは足りない場合があります。海外では一般的な表記であっても、日本のアレルゲン表示として十分ではないことがあります。たとえば、「tree nuts」「dairy」「gluten」「seafood」といった包括的な表現は、日本の対象品目ごとの確認に分解する必要があります。

表示方法を確認する際は、原材料表とアレルゲン表だけでなく、複合原材料の内訳、添加物の由来、加工助剤の使用状況、製造ラインでの混入可能性をあわせて確認します。特定原材料を含む場合には表示義務があるため、最終ラベルに正しく反映されているかを確認することが重要です。

制度適用フロー

アレルゲン表示の確認では、対象品目の有無を単純に見るだけでは足りません。原材料、複合原材料、添加物、製造工程、コンタミネーション、最終表示、広告表示を順に確認することで、表示漏れや不整合を防ぎます。

ステップ 確認内容 判断の考え方 次に行う対応
1. 対象食品の確認 容器包装された加工食品として販売されるか 販売形態により表示義務の扱いが変わる場合があります。 商品形態、販売方法、包装形態を確認します。
2. 対象品目の確認 特定原材料・特定原材料に準ずるものが含まれるか 2026年4月時点の対象品目に照らして確認します。 原材料表、アレルゲン表、成分表を取得します。
3. 複合原材料の確認 ソース、シーズニング、ミックス粉、香料などの内訳 最終製品の原材料表だけでは不十分な場合があります。 複合原材料の規格書や内訳資料を取得します。
4. 製造工程・コンタミネーション確認 同一工場、同一ライン、共用設備、清掃管理 意図しない混入可能性を把握します。 製造ライン情報、アレルゲン管理表、清掃手順を確認します。
5. 日本語表示案への反映 個別表示、一括表示、代替表記、拡大表記の整合性 日本の食品表示基準に合った表示になっているか確認します。 ラベル案、原材料名欄、添加物欄を確認します。
6. EC・広告表示との整合 商品ページ、広告、パンフレット、店頭POPの表示 容器包装と販売表示に不一致がないか確認します。 不使用表示やフリー表示の根拠資料を整理します。

よくある誤解

アレルゲン表示では、海外ラベルに書かれている情報をそのまま使えばよい、主要原材料だけ見ればよい、不使用と表示すれば安全性を訴求できる、といった誤解が起きやすくなります。輸入食品では、日本の制度に合わせた再確認が必要です。

よくある誤解 実際の考え方 実務上の注意点
海外ラベルを翻訳すれば日本の表示になる 海外制度と日本制度では対象品目や表記方法が異なる場合があります。 日本の特定原材料・準ずるものに照らして確認します。
主要原材料だけ見ればよい 複合原材料、添加物、香料、加工助剤、キャリーオーバーも確認対象になり得ます。 ソース、シーズニング、ミックス粉、カプセル材などの内訳を確認します。
ナッツ類はまとめて確認すればよい くるみ、落花生、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオなどは品目ごとに扱いが異なります。 海外資料の「nuts」を日本の対象品目ごとに分解します。
表示推奨品目は確認しなくてよい 特定原材料に準ずるものは義務表示ではありませんが、可能な限り表示する実務が求められます。 輸入者の表示方針と販売先要件を事前に確認します。
原材料に入っていなければ混入可能性は考えなくてよい 同一工場、同一ライン、共用設備によるコンタミネーションの可能性があります。 製造工程情報、清掃管理、アレルゲン管理表を確認します。
グルテンフリーや乳不使用は自由に表示できる 不使用表示やフリー表示には根拠資料と管理実態が必要です。 根拠のない安全訴求は、景品表示法上の問題につながる可能性があります。

実務で問題になりやすいケース

アレルゲン表示で問題になりやすいのは、海外メーカーの資料が日本の表示対象品目に対応していない場合です。輸入者が海外ラベル、商品規格書、アレルゲン表を受け取っていても、複合原材料の内訳や製造ライン情報が不足していると、日本向け表示を作成できないことがあります。

ケース 問題になりやすい点 確認すべき資料 実務上の注意点
輸入菓子 乳、小麦、卵、ナッツ類が複数の原材料に含まれる 原材料表、アレルゲン表、複合原材料内訳、製造ライン情報 チョコレート、クリーム、クッキー生地、ナッツ加工品を分解して確認します。
ナッツ入り食品 海外資料ではnutsと一括され、品目ごとの確認ができない ナッツ品目リスト、原料規格書、配合表、製造者証明 カシューナッツ、ピスタチオ、くるみ、落花生などを個別確認します。
業務用シーズニング 調味料や香料の中に小麦、大豆、乳、魚介由来成分が含まれる シーズニング規格書、香料資料、添加物資料、由来原料資料 最終製品の原材料表だけでは判断できません。
健康食品・サプリメント ゼラチン、乳、大豆、小麦、カプセル材、賦形剤の由来が不明 成分表、配合表、カプセル材資料、添加物規格書 食品表示に加え、薬機法や広告表現も確認します。
グルテンフリー表示 海外基準の表示をそのまま日本向け表示に使う 検査成績書、製造工程表、コンタミネーション管理資料 根拠資料がないままフリー表示を行わないようにします。
EC表示とラベル表示の不一致 容器包装表示とWeb商品ページでアレルゲン情報が異なる ラベル案、商品ページ、広告原稿、販売資料 販売前に表示媒体間の整合性を確認します。

4列判断チェックリスト

アレルゲン表示の確認では、輸入前、ラベル作成時、販売前、広告作成時で確認相手と確認事項が変わります。食品表示担当だけでなく、輸入者、海外メーカー、通関業者、販売担当者の間で情報を整理することが重要です。

確認場面 確認する相手 確認事項 問題がある場合の対応
商品選定時 輸入者・販売担当者 対象食品、販売形態、アレルゲン不使用表示の予定 不使用表示を行う場合は、根拠資料の有無を先に確認します。
船積前 海外メーカー・輸出者 原材料表、アレルゲン表、複合原材料内訳、製造工程情報 資料不足の場合は、船積前に追加資料を取得します。
日本語ラベル作成時 輸入者・表示担当者 特定原材料、準ずるもの、個別表示、一括表示、代替表記 日本の食品表示基準に合わせて表示案を修正します。
コンタミネーション確認時 製造者・品質管理担当 同一工場、同一ライン、共用設備、清掃管理、混入可能性 注意喚起表示や販売方針の要否を検討します。
EC・広告作成時 販売担当者・広告担当者 商品ページ、広告、POP、パンフレットとラベル表示の整合性 不一致があれば販売前に修正します。
表示不備発見時 輸入者・販売先・行政相談先 対象ロット、販売範囲、健康被害の有無、回収要否 販売停止、訂正表示、回収、取引先連絡を検討します。

フォワーダーの関与範囲対比表

フォワーダーや通関業者は、アレルゲン表示の適法性を最終判断する立場ではありません。ただし、輸入食品の通関・納品実務では、ラベル作成に必要な原材料表やアレルゲン情報の不足が納期に影響する場合があります。早期に必要資料の有無を確認し、輸入者へ注意喚起することが重要です。

区分 支援しやすいこと 断定すべきでないこと 実務上の対応
対象食品の把握 加工食品、菓子、健康食品などアレルゲン確認が必要になりやすい貨物を把握する アレルゲン表示が不要であると独自に断定する 輸入者に原材料表・アレルゲン表の取得状況を確認します。
資料取得の注意喚起 海外メーカーから原材料表、アレルゲン表、製造工程情報を取得するよう案内する 資料があれば表示が必ず適法になると保証する 表示判断は輸入者・表示担当者・専門家の確認事項として整理します。
納期管理 ラベル修正や追加確認により納品が遅れる可能性を共有する 食品表示確認なしに予定どおり販売できると約束する 初回輸入品や表示変更品では余裕を持った日程にします。
輸入時資料との整合 食品等輸入届出用資料と販売ラベル用資料の不一致に注意喚起する 届出資料をもとに最終表示を自社判断で確定する 原材料表、成分表、表示案の整合を輸入者へ確認します。
広告・EC表示への注意喚起 容器包装表示とEC表示が別管理になるリスクを伝える 広告表現や不使用表示の適法性を断定する 販売担当者・表示担当者側で確認するよう促します。
表示不備時の物流対応 販売停止、出荷停止、在庫保留、返品、回収に関する物流情報を整理する 回収要否や法的責任を独断で判断する 輸入者、販売先、専門担当者の判断に基づき物流対応します。

制度が問題になる典型場面

アレルゲン表示が問題になる典型場面は、海外メーカーの情報を日本向け表示に変換する過程です。海外ラベル、商品規格書、アレルゲン表、EC表示、広告表現の間に不一致があると、表示漏れや誤認表示につながる可能性があります。

典型場面 発生しやすい問題 確認すべき相手・資料 実務上の対応
海外ラベルにallergens欄がない 日本の対象品目に照らした確認ができない 海外メーカー、原材料表、アレルゲン表、製造工程表 日本向けに必要な対象品目を指定して確認します。
複合原材料の内訳が不明 ソースやシーズニング中のアレルゲンを見落とす 複合原材料規格書、原料メーカー資料、配合表 最終製品だけでなく、原材料単位まで確認します。
ナッツ類の表記が包括的 カシューナッツ、ピスタチオ、くるみ、落花生などの区別ができない ナッツ原料規格書、アレルゲン表、製造者証明 日本の対象品目ごとに分けて確認します。
不使用表示を行う 原材料不使用と混入リスク管理が混同される 検査成績書、製造ライン情報、清掃手順、管理記録 表示根拠が不足する場合は、不使用表示を避けます。
EC表示を別部署が作成する 商品ページと実際の容器包装表示が一致しない ラベル案、商品ページ、広告原稿、販売資料 公開前に表示情報を一元確認します。
制度改正後の対象品目を反映していない 旧リストのまま表示案を作成し、カシューナッツやピスタチオを見落とす 最新の対象品目リスト、原材料表、ラベル案 改正後の特定原材料・準ずるものに基づき再確認します。

制度適用シナリオ1:ナッツ入り輸入菓子を販売する場合

海外製のチョコレート菓子やクッキーでは、原材料に「nuts」とだけ記載されている場合があります。しかし、日本のアレルゲン表示では、くるみ、落花生、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオなど、品目ごとに表示上の扱いが異なります。

この場合、輸入者は、海外メーカーに対して使用しているナッツの具体的な種類を確認します。カシューナッツは特定原材料に追加されており、くるみや落花生も義務表示対象です。一方、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオは特定原材料に準ずるものとして扱われます。

実務上は、海外ラベルの「nuts」をそのまま「ナッツ類」と訳すだけでは不十分です。日本の対象品目ごとに分解し、日本語ラベル、EC表示、広告表示へ正しく反映することが重要です。

制度適用シナリオ2:業務用シーズニングを輸入する場合

業務用シーズニングやソース、調味料では、最終製品の原材料表に「調味料」「香料」「シーズニング」と記載されているだけで、内部に含まれる小麦、大豆、乳、魚介由来原料などが分からないことがあります。

この場合、輸入者は、シーズニングメーカーまたは原料メーカーから、複合原材料の内訳、アレルゲン表、添加物の由来原料、製造工程情報を取得します。業務用原料の場合、最終製品メーカーがこの情報を使って消費者向け表示を作成するため、情報伝達の精度が重要です。

フォワーダーや通関業者は、シーズニングを単なる食品原料として扱うだけでなく、ラベル作成に必要な情報がそろっているかを輸入者へ確認することが実務上有効です。資料不足がある場合、通関後に販売準備が止まる可能性があります。

制度適用シナリオ3:グルテンフリー表示を行う輸入食品の場合

海外で「gluten free」と表示されている食品を日本で販売する場合、その表示をそのまま日本向け広告に使えるとは限りません。海外基準に基づくグルテンフリー表示であっても、日本国内で消費者にどのような印象を与えるか、根拠資料があるかを確認する必要があります。

この場合、輸入者は、原材料表、製造工程表、検査成績書、コンタミネーション管理資料を確認します。小麦を原材料として使っていないだけでなく、同一工場や同一ラインで小麦を扱っていないか、清掃管理がどうなっているかも確認対象になります。

「グルテンフリー」「小麦不使用」「アレルゲン不使用」などの表示は、消費者が安全性を判断する重要な情報です。根拠資料が不十分なまま表示すると、食品表示法や景品表示法上の問題につながる可能性があるため、表示前に根拠を整理することが重要です。

広告・販売表示との関係

アレルゲンに関する表示は、容器包装だけでなく、ECサイトの商品説明、パンフレット、店頭POP、SNS広告、営業資料でも注意が必要です。容器包装には正しく表示されていても、商品ページや広告で異なる表現をしている場合、消費者に誤解を与える可能性があります。

「アレルゲン不使用」「グルテンフリー」「乳不使用」「卵不使用」「ナッツ不使用」などの表示を行う場合は、単に原材料として使っていないだけでなく、製造工程上の混入可能性、検査成績書、管理記録、サプライヤー証明を確認する必要があります。

実態と異なる表示や、消費者に安全性を過度に誤認させる表示は、食品表示法だけでなく、景品表示法上の優良誤認表示の問題につながる可能性があります。特に輸入食品では、海外メーカーの説明や海外向け表示をそのまま日本向け広告に転用しないことが重要です。

輸入者・販売者が準備すべき資料

アレルゲン表示を正確に行うには、輸入前の段階で海外メーカーから必要資料を取得し、日本向け表示に反映できる状態にしておく必要があります。表示不備は健康被害、販売停止、回収、取引先対応につながる可能性があるため、食品表示の中でも特に慎重な確認が求められます。

資料 確認できる内容 主な取得先 不足した場合の影響
原材料表 食品に含まれる原材料と対象品目の有無 海外メーカー、輸出者 基本的なアレルゲン確認ができません。
アレルゲン表 特定原材料・準ずるものに該当する原材料の有無 海外メーカー、品質管理部門 日本の対象品目に対応していない場合、再確認が必要です。
複合原材料の内訳 ソース、シーズニング、香料、ミックス粉などの内部構成 原料メーカー、製造者 最終製品だけでは表示漏れが起きる可能性があります。
製造工程表 製造ライン、共用設備、工程中の混入可能性 製造者 コンタミネーション確認が難しくなります。
コンタミネーション管理資料 同一工場・同一ラインでの対象品目取扱い、清掃管理 製造者、品質管理部門 注意喚起表示や不使用表示の判断が難しくなります。
検査成績書・製造者証明 不使用表示やフリー表示の根拠、管理実態 試験機関、製造者 広告・販売表示の根拠が不足する可能性があります。

まとめ

アレルゲン表示は、食物アレルギーの原因となる原材料が食品に含まれている場合に、その情報を消費者へ正確に伝えるための重要な表示制度です。特定原材料は表示義務の対象であり、特定原材料に準ずるものは表示が推奨される品目です。

2026年4月時点では、特定原材料は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生、カシューナッツの9品目です。特定原材料に準ずるものは、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンの20品目です。

輸入食品では、海外ラベルを翻訳するだけでは不十分です。原材料、複合原材料、添加物、加工助剤、コンタミネーション情報を確認し、日本の食品表示基準に合わせて表示を作成する必要があります。アレルゲン表示の不備は健康被害、販売停止、回収、広告上の問題につながるため、輸入前の資料確認と表示整合性の管理が重要です。

同義語・別表記

  • アレルゲン表示
  • アレルギー表示
  • 食物アレルギー表示
  • 特定原材料表示
  • アレルゲン
  • 特定原材料
  • 特定原材料に準ずるもの
  • Allergen Labeling
  • Allergy Labeling