海上運賃の種類と費用構造
海上運賃の種類と費用構造
海上運賃とは、国際海上輸送で貨物を運ぶために設定される基本運賃及びこれに付随する各種費用の総称です。
実務上の請求額は、Ocean Freight又はBase Rateと呼ばれる基本運賃だけで決まるわけではありません。燃料、市況、為替、繁忙期、港湾事情、ターミナル作業、CFS作業、書類発行、事前申告、貨物保管及びコンテナ使用期間等に応じて、複数の費用が加算されます。
また、同じ名称の費用でも、船会社、NVOCC、フォワーダー、港、航路及び契約条件によって、含まれる作業や課金単位が異なることがあります。
そのため、海上運賃は、費用名だけで判断するのではなく、誰が請求するのか、何の業務に対する費用なのか、どの単位で計算するのか、どの時点の料率を適用するのかを確認する必要があります。
本記事では、海上運賃を費用の性質ごとに分類し、LCLとFCLの計算方法、W/M及びRevenue Ton、主なサーチャージ、All-in表示並びに見積条件の確認方法を整理します。
この記事の位置付け
本記事は、海上運賃に使用される費用名、計算単位及び費用分類を整理する入口記事です。
個別見積書の読み方、追加費用の発生条件、フォワーダーの販売運賃と仕入運賃の差額及びNVOCCの混載収益については、それぞれの専門記事で確認します。
| 論点 | 本記事で扱う内容 | 詳細を扱う記事 |
|---|---|---|
| 海上運賃の種類 | 基本運賃、サーチャージ、ローカルチャージ及び書類費用の分類 | 本記事 |
| LCL運賃 | W/M、Revenue Ton、Minimum Freight及びCFS Charge | 本記事 |
| FCL運賃 | コンテナ単位の運賃、THC及びコンテナ関連費用 | 本記事 |
| 見積書の読み方 | 費用の含有範囲、有効期限及び課金条件の概要 | 海上運賃の見積書で見るべきポイント |
| 発生時の追加費用 | 通常運賃と例外的費用を区別する考え方 | 荷主が見落としやすい追加費用 |
| フォワーダー実務 | 運賃設定、仕入、販売及び請求主体の概要 | フォワーダーと海上運賃の実務解説 |
| 運賃差益 | 販売運賃と直接原価との差額が生じる基本構造 | フォワーダーの運賃差益 |
| 混載運賃 | 複数荷主のLCL貨物を集約して収益・原価を管理する構造 | 混載業務 |
| Demurrage・Detention | 海上運賃ではなく、フリータイム超過により生じる費用として位置付ける | Demurrage・Detentionを誰が負担するか |
海上運賃を構成する主な費用区分
| 費用区分 | 主な費用例 | 費用の性質 | 主な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 基本運賃 | Ocean Freight、Base Rate、FAK、Commodity Rate | 合意された海上運送区間の基本的な運賃 | 航路、コンテナ種類、貨物、運賃単位及び有効期限 |
| 変動サーチャージ | BAF、FAF、CAF、PSS、WRS、Congestion Surcharge | 燃料、市況、為替、繁忙期、危険又は混雑等を反映する費用 | 基本運賃に含むか、別建てか、適用日及び改定条件 |
| 積地ローカルチャージ | Origin THC、CFS Charge、Documentation Fee、搬入費用 | 積地港、CFS、ターミナル又は書類処理で生じる費用 | 輸出者・輸入者のどちらが負担するか、見積に含むか |
| 揚地ローカルチャージ | Destination THC、D/O Fee、CFS Charge、Handling Fee | 揚地での貨物引渡し、ターミナル又はCFS作業に伴う費用 | Prepaid・Collect、荷受人への請求額及び現地料金表 |
| 書類・申告費用 | B/L Fee、Documentation Fee、AMS、AFR、ENS | 運送書類の発行又は各国の事前申告制度への対応費用 | 誰が申告するか、B/L単位かShipment単位か |
| コンテナ使用・保管費用 | Demurrage、Detention、Storage、Empty Return関連費用 | 所定の無料期間又は保管条件を超えた場合に発生する費用 | Free Time、起算日、返却期限及び料金表 |
| 例外作業費用 | 検査、開梱、再梱包、待機、再配達、書類訂正、横持ち | 通常工程から外れた追加作業又は時間に対する費用 | 発生原因、事前承認、証憑及び負担者 |
D/O Fee、Demurrage、Detention、保管料及び検査費用等は、広い意味では国際輸送に伴う費用ですが、厳密には基本的なOcean Freightそのものではありません。
見積書上で全ての費用を一括して「海上運賃」と呼ぶ場合でも、費用の性質と発生条件を分けて確認する必要があります。
基本運賃の主な種類
| 運賃・料率 | 内容 | 主な適用場面 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| Ocean Freight | 海上運送区間に設定される基本運賃 | FCL、LCLその他の海上輸送 | サーチャージ又はローカルチャージを含むとは限らない |
| Base Rate | サーチャージ等を加える前の基礎料率 | 運賃表、Service Contract、Tariff | 最終請求額ではなく、計算の出発点となる場合がある |
| FAK | Freight All Kindsとして、一定範囲の一般貨物に共通料率を適用する方式 | 一般貨物、FCL、混載サービス等 | 危険品、重量物、特殊貨物等が除外されることがある |
| Commodity Rate | 特定品目又は貨物群に設定する運賃 | 機械、化学品、食品、金属、重量貨物等 | 品名・HS分類・貨物性状の申告が料率適用に影響する |
| Minimum Freight | 計算結果が一定額未満でも請求する最低運賃 | 小口LCL、サンプル、少量貨物 | W/M計算額よりMinimumが優先する場合がある |
| Volume Rate | 一定の継続物量を前提に設定する料率 | 年間契約、特定航路の継続貨物 | 最低物量、期間、未達時の条件を確認する |
| Spot Rate | 特定の本船、期間又は空きスペースについて設定する短期運賃 | 市況変動時、緊急出荷、空きスペース販売 | 有効期間が短く、スペース保証を伴わない場合がある |
| Box Rate | コンテナ1本単位で設定する運賃 | FCL又はNVOCCの自社混載原価 | 20フィート、40フィート、40フィートHC等を区別する |
LCLとFCLの運賃構造
| 比較項目 | LCL | FCL | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| 基本単位 | W/M、Revenue Ton、CBM又は重量 | コンテナ1本 | 見積書に示された課金単位 |
| 最低運賃 | Minimum Freight又はMinimum Chargeが設定されやすい | 原則としてコンテナ単位のため別の最低運賃は生じにくい | 小口LCLで最低料金が適用されるか |
| CFS費用 | 搬入、仕分け、バンニング、デバンニング等が関係する | 通常はCY受渡しが中心となる | 積地・揚地のCFS Charge |
| ターミナル費用 | LCL料金又はCFS料金に組み込まれる場合がある | THC等がコンテナ単位で請求されやすい | 運賃に含むか別建てか |
| コンテナ使用 | 荷主がコンテナ全体を直接使用する構造ではない | 荷主又は契約者がコンテナを搬出・返却する | Demurrage、Detention及び返却条件 |
| 特殊貨物 | 長尺、重量物、危険品等は割増又は受入不可となることがある | Open Top、Flat Rack、Reefer等の特殊コンテナを使用する | 特殊作業、積載制限及び追加料金 |
LCLとFCLのどちらが安いかは、貨物量だけでは決まりません。
LCLではW/M運賃、Minimum Freight、CFS Charge及び書類費用が加算されます。FCLではコンテナ単位の運賃、THC、ドレージ、コンテナ返却及びフリータイムの管理が必要です。
一定の貨物量を超えるとFCLの方が有利になる場合がありますが、港、航路、梱包形状、重量、配送条件及び貨物の取扱条件を含めて比較します。
W/MとRevenue Ton
W/Mとは、Weight or Measurementの略で、重量と容積を比較し、運賃計算上大きい方を採用する方法です。
海上LCLでは、一般に1,000kgを1 Weight Ton、1m³を1 Measurement Tonとして比較し、大きい方をRevenue Ton又はFreight Tonとする方法が使用されます。
ただし、換算基準、端数処理、最低運賃及び課金単位は、航路、NVOCC、フォワーダー及び見積条件によって異なることがあります。
| 貨物例 | 容積 | 重量 | Revenue Tonの考え方 |
|---|---|---|---|
| 容積勝ち貨物 | 3.2m³ | 1,800kg=1.8 Weight Ton | 3.2 Measurement Tonを採用する |
| 重量勝ち貨物 | 0.8m³ | 1,600kg=1.6 Weight Ton | 1.6 Weight Tonを採用する |
| 同等貨物 | 2.0m³ | 2,000kg=2.0 Weight Ton | 2.0 Revenue Tonとする |
| Minimum適用貨物 | 0.2m³ | 80kg=0.08 Weight Ton | 計算値ではなく1 Revenue Ton等の最低課金を適用する場合がある |
貨物のInvoice価額は、通常、W/M計算の基準にはなりません。梱包後の外寸、総重量及び個数を正確に確認する必要があります。
見積時の寸法とCFS搬入後の検量結果が異なれば、最終請求額が変わることがあります。
主なサーチャージ
| 名称 | 一般的な意味 | 主な変動要因 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| BAF | Bunker Adjustment Factor | 船舶燃料価格 | 基本運賃に含むか、船積時の料率を適用するか |
| FAF | Fuel Adjustment Factor | 燃料費 | BAFと同様の目的で使用される場合がある |
| CAF | Currency Adjustment Factor | 為替変動 | 対象通貨、算定方法及び改定時期 |
| PSS | Peak Season Surcharge | 繁忙期、需給逼迫 | 適用期間、積地、仕向地及び貨物種類 |
| SPSS | 特定の繁忙期又は需給逼迫に設定される割増 | 特別なピーク期間 | PSSとの重複又は適用条件 |
| WRS | War Risk Surcharge | 戦争、武力衝突、航路危険 | 対象海域、経由航路及び適用開始日 |
| Congestion Surcharge | 港湾混雑等に対応する割増 | ターミナル混雑、ストライキ、船混み | 対象港、期間及び解消後の終了条件 |
| Low Sulphur Surcharge | 低硫黄燃料その他の環境規制対応費用 | 燃料規制、航路及び船会社の料金制度 | BAF等へ統合されているか、別建てか |
| Emergency Surcharge | 急激な市況変動、航路変更又は緊急対応に伴う割増 | 運航障害、スペース不足、臨時費用 | 根拠、適用期間及び既存Bookingへの適用 |
サーチャージの名称は、船会社又はNVOCCによって異なることがあります。また、以前は別建てであった費用がOcean Freightへ統合される場合や、逆にAll-in Rateから切り離される場合もあります。
YASは、Yen Appreciation Surcharge等として古い運賃表に記載されることがありますが、現在の見積で一般的な費用であると決め付けるべきではありません。古い資料を参照する場合は、現在も適用されているかを確認します。
ターミナル・CFS・コンテナ関連費用
| 費用名 | 主な内容 | 課金単位の例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| THC | ターミナルでのコンテナ取扱費用 | コンテナ単位 | 積地・揚地双方で発生することがある |
| CHC | コンテナ取扱に関する費用 | コンテナ単位 | 港・船会社によりTHCと近い意味で使用されることがある |
| ECHC | 空コンテナ取扱に関する費用 | コンテナ単位 | 空コンテナ搬出・返却条件とあわせて確認する |
| CFS Charge | LCL貨物の受付、検量、仕分け、バンニング又はデバンニング等 | W/M、CBM、Shipment又は最低料金 | 積地・揚地で作業内容と料率が異なる |
| Storage | ターミナル、CFS又は倉庫での保管 | 日数、重量、容積又はコンテナ単位 | 無料期間と起算日を確認する |
| Demurrage | コンテナを港・CY等から所定期間内に搬出できない場合の費用 | コンテナ・日数単位 | 通関、D/O、配送準備の遅れが原因となることがある |
| Detention | 搬出後の空コンテナを所定期間内に返却できない場合の費用 | コンテナ・日数単位 | 荷卸し、配送又は返却先の事情を確認する |
Demurrage、Detention及びStorageは、予定どおりに搬出・返却できれば発生しない可能性がある条件付費用です。
したがって、通常のOcean Freightと区別し、Free Time、起算日、休日計算、返却場所及び料金表を確認します。
書類・事前申告関連費用
| 費用名 | 主な内容 | 確認事項 |
|---|---|---|
| Documentation Fee | 輸送書類、請求書類又は船積関連書類の作成・処理 | B/L単位かShipment単位か、訂正を含むか |
| B/L Fee | Original B/L、Sea Waybillその他の運送書類の発行 | 発行者、通数、Original・Surrenderの違い |
| Surrender Fee | Original B/Lを発行地で回収し、仕向地で原本なしのReleaseを行う処理 | B/L Feeに含むか、別途か |
| Amendment Fee | B/L、Manifest、申告情報等の訂正 | 訂正時期、船積後訂正及び第三者実費 |
| AMS | 米国向け等の事前貨物情報申告 | 船会社申告かNVOCC申告か、B/L階層 |
| AFR | 日本向け海上コンテナ貨物等の事前申告対応 | Master・House情報、申告主体及び期限 |
| ENS | 欧州向け等のEntry Summary Declaration関連対応 | 対象国・経由地、申告主体及び訂正費用 |
船会社の事前申告費用とNVOCCのHouse B/Lレベルの申告費用が、別々に発生する場合があります。
同じ「AMS Fee」又は「Manifest Fee」という名称でも、どのB/L階層について、誰が申告する費用なのかを確認します。
All-in Rateの確認
All-in Rateとは、複数の費用を一つの合計運賃として提示する表現です。
ただし、All-inという言葉だけで、積地費用、揚地費用、D/O Fee、通関、配送、保管、検査及びDemurrage・Detentionまで全て含まれるとは限りません。
| 確認事項 | 確認内容 | 不明な場合のリスク |
|---|---|---|
| 含まれる費用 | Ocean Freight、BAF、PSS、THC等のどこまでを含むか | 船積後又は到着後に別途請求される |
| 含まれない費用 | D/O、CFS、通関、配送、検査、保管等 | 荷主が総額を誤認する |
| 対象区間 | Port to Port、CY to CY、CFS to CFS又はDoor to Door | 積地・揚地作業の負担者が不明になる |
| 対象貨物 | 一般貨物、危険品、重量物、特殊コンテナ等 | 貨物申告後に追加料金が発生する |
| 有効期限 | Booking日、出港日、搬入日等の適用基準 | 見積取得時と船積時の料金が異なる |
| 変動費用 | WRS、Emergency Surcharge等を固定するか | 見積後の新規サーチャージが争いになる |
見積書には、「All-in excluding destination local charges」「All-in subject to WRS at time of shipment」等、含有範囲と例外を具体的に記載する必要があります。
費用名だけで判断してはいけない理由
| 確認軸 | 確認内容 | 例 |
|---|---|---|
| 請求主体 | 船会社、NVOCC、フォワーダー、CFS、海外代理店の誰が請求するか | 船会社THCとフォワーダーHandling Feeを区別する |
| 課金単位 | Container、B/L、Shipment、W/M、CBM、日数等 | CFS ChargeがW/MかMinimumかを確認する |
| 対象作業 | 運送、荷役、書類、申告、保管又は配送のどれか | Documentation FeeにB/L発行を含むか確認する |
| 対象区間 | 積地、海上区間、揚地又は国内配送 | Origin THCとDestination THCを区別する |
| 適用時点 | 見積日、Booking日、搬入日又は出港日 | 船積時のBAFを適用するか確認する |
| 条件発生 | 常時発生するか、遅延・検査等がある場合だけ発生するか | Ocean FreightとStorageを区別する |
Standard Five Classificationsとの接続
この五分類は、法令上又は業界全体で確立された法的分類ではなく、本シリーズにおいて、フォワーダーが契約及び実務上どの範囲まで関与しているかを整理するための分析上の枠組みである。
| Standard Five Classifications | 海上運賃との主な関係 | 請求時の確認事項 |
|---|---|---|
| 1. Simple Intermediary | 船会社又はNVOCCの運賃を荷主へ取り次ぐ | 第三者料金の案内か、自社販売運賃かを明確にする |
| 2. Cargo Transportation Service Provider | CFS、通関、配送、書類等の輸送関連サービスを提供する | Ocean Freightと自社作業費を区別する |
| 3. NVOCC / House B/L Issuer | 自社が運送人として荷主へ運賃を設定する | House B/L上の運送区間、販売運賃及び責任範囲を確認する |
| 4. Door-to-Door Single Contractor | 海上運賃、集荷、通関及び配送を一括した料金として提示する | 一括料金の範囲と条件付費用を明示する |
| 5. Agent / Coordinator for Specific Operations | 特定のBooking、費用回収又は請求調整を行う | Principalの運賃を回収するのか、自社料金を請求するのかを確認する |
Standard Five Classificationsとは別に、誰がContracting Carrierであり、誰がActual Carrier、代理人、取次者又は下請事業者であるかを確認します。
また、Booking、House B/L発行、船会社運賃の支払、CFS、D/O、通関、配送及び費用回収のうち、具体的にどの業務を誰が引き受けているかを別に確認します。
Ocean Freight、THC、CFS Charge、D/O Fee、Documentation Fee及び各種サーチャージは、Standard Five Classificationsを置き換えるものではなく、別の第六の分類を構成するものでもありません。
具体例1:横浜港発シンガポール港向けLCL貨物のW/M計算
横浜港からシンガポール港へ輸送する機械部品について、梱包後容積が3.2m³、総重量が1,800kg、LCL運賃が1 Revenue Ton当たり9,500円であったとします。
重量基準では1,800kgを1.8 Weight Tonとして計算します。容積基準では3.2m³を3.2 Measurement Tonとして計算します。
W/Mでは大きい方を採用するため、適用数量は3.2 Revenue Tonとなり、基本運賃は次のとおりです。
3.2 Revenue Ton × 9,500円=30,400円
荷主は、貨物重量が1,800kgであるため、1.8 Ton × 9,500円=17,100円になると考えていました。
フォワーダーは、見積書に「JPY 9,500 W/M」と記載しており、容積の方が大きいため30,400円が正しいと説明しました。
両者の差額は13,300円です。
判断では、見積書にW/Mが明示されていたか、1m³と1,000kgの換算基準、端数処理、CFS検量結果及びMinimum Freightを確認します。
重量又は容積のどちらを使うかを荷主側が自由に選べるわけではありません。合意されたW/M条件に基づきRevenue Tonを決定します。
具体例2:横浜港発ロサンゼルス港向けFCL貨物でBAFが改定された場合
横浜港からロサンゼルス港へ輸送する20フィートFCL貨物について、フォワーダーが次の見積を提示したとします。
| 費用 | 見積時 | 船積時 |
|---|---|---|
| Ocean Freight | 1,200米ドル | 1,200米ドル |
| BAF | 180米ドル | 260米ドル |
| 合計 | 1,380米ドル | 1,460米ドル |
見積書には「BAF subject to tariff at time of shipment」と記載され、有効期限はOcean Freight部分についてのみ設定されていました。
船積時にBAFが80米ドル増額されたため、フォワーダーは1,460米ドルを請求しました。
荷主は、見積総額1,380米ドルを承認してBookingしたため、追加の80米ドルはフォワーダーが負担すべきだと主張しました。
フォワーダーは、Ocean Freightは固定したが、BAFは船積時Tariffに従う変動項目であり、見積書にも明記していたと反論しました。
判断では、見積有効期限が何に適用されるか、BAFの変動条件が読み取れる形で記載されていたか、適用基準がBooking日・搬入日・出港日のどれか及び荷主が条件を承認したかを確認します。
「見積を承認した」という事実だけで、全費用が固定されたとは限りません。一方、変動条件が不明確であれば、追加請求の説明が不十分と評価される可能性があります。
具体例3:上海港発東京港向けFCL貨物のAll-in表示
上海港から東京港へ輸送する40フィートHCコンテナについて、荷主が「USD 650 All-in」という見積を選択したとします。
貨物到着後、日本側で次の費用が請求されました。
| 費用 | 請求額 |
|---|---|
| Destination THC | 45,000円 |
| D/O Fee | 12,000円 |
| Documentation・Handling | 5,000円 |
| 合計 | 62,000円 |
荷主は、「All-in」と記載されている以上、日本到着後の費用も含まれると理解していたとして、62,000円の支払を拒否しました。
フォワーダーは、USD 650はOcean Freight、BAF及びPSSを含む海上区間のAll-in Rateであり、見積書の備考欄には「Destination local charges excluded」と記載していたと説明しました。
判断では、All-inの対象区間、除外費用の表示位置、文字の明確性、Incoterms、荷主への事前説明及び日本側料金表を確認します。
All-inは、世界共通の固定された包含範囲を示す法定用語ではありません。何を含み、何を除くかを見積書で具体的に示す必要があります。
よくある誤解
| よくある誤解 | 実務上の考え方 | 確認事項 |
|---|---|---|
| Ocean Freightだけを確認すれば総輸送費が分かる | サーチャージ、ローカルチャージ、書類費用等が別途発生する | 見積の含有費用と除外費用 |
| All-inと書いてあれば全ての費用を含む | 海上区間だけのAll-inである場合がある | 対象区間とDestination Charges |
| W/Mでは荷主が重量又は容積を選べる | 合意された換算基準で大きい方を適用する | Revenue Tonの算定方法 |
| LCL運賃はCBMだけで計算する | 重量の方が大きければ重量基準を採用する | 総重量、容積及びMinimum |
| 見積有効期限内なら全てのサーチャージが固定される | 船積時Tariff等を適用する変動項目がある | 各費用の適用日と変動条件 |
| THCはOcean Freightに必ず含まれる | 積地・揚地で別建てとなる場合がある | Origin・Destination THC |
| D/O Feeは海外で海上運賃をPrepaidすれば発生しない | 到着地での貨物引渡し手続費用として別途発生する場合がある | Destination Local Charges |
| DemurrageとDetentionは海上運賃の一部である | フリータイム超過等の条件により発生する費用である | 起算日、無料日数及び返却期限 |
| 費用名が同じなら、どの会社でも同じ内容である | 請求主体、作業範囲及び課金単位が異なる場合がある | 料金表と作業内容 |
| YASは現在も全航路で一般的に発生する | 古い運賃表等に見られる費用であり、現在の適用を個別確認する | 現行Tariffと適用航路 |
海上運賃確認チェックリスト
| 確認場面 | 確認する相手 | 確認事項 | 問題がある場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 見積依頼時 | フォワーダー、NVOCC、船会社 | 貨物、航路、LCL・FCL、コンテナ種類及び運賃単位 | 貨物条件を確定してから再見積を依頼する |
| 見積比較時 | 各見積提供者 | Ocean Freight、サーチャージ、積地・揚地費用及び配送 | 同じ範囲の総額へ組み直して比較する |
| LCL計算時 | フォワーダー、CFS | W/M、Revenue Ton、検量値、端数処理及びMinimum | 梱包後寸法・重量を再確認する |
| FCL手配時 | 船会社、NVOCC、配送業者 | コンテナ種類、THC、ドレージ、Free Time及び返却条件 | 搬出・納品・返却工程を逆算する |
| Booking確定時 | 見積提供者 | 有効期限、適用船、サーチャージ及びスペース条件 | 固定費用と変動費用を書面で分ける |
| 書類発行時 | 船会社、NVOCC、フォワーダー | B/L Fee、Documentation Fee、申告費用及び訂正費用 | 発行前に記載内容を確認する |
| 到着前 | 海外代理店、輸入側フォワーダー | Destination THC、D/O、CFS、通関及び配送費用 | 荷受人へ概算と支払条件を事前通知する |
| 追加請求時 | 請求者 | 費用名、発生原因、料率、数量及び証憑 | 通常費用と例外費用を分けて確認する |
| 請求書照合時 | 営業、オペレーション、経理 | 見積、Booking、B/L、料金表及び実績数量 | 差額理由が不明な項目を自動承認しない |
専門家への確認を検討する場面
通常の運賃照合は、見積書、料金表及び請求書を確認することで処理できます。一方、次のような場合には、契約・法務・税務又は海運実務の専門家への確認を検討します。
- 高額な追加サーチャージが既存Bookingへ遡って適用された場合
- Service Contract、Tariff又は運送約款の適用関係が争われている場合
- All-in表示について、荷主とフォワーダーの理解が大きく異なる場合
- 独占禁止法、競争法又は不当表示に関する問題が疑われる場合
- 外国税、源泉税、VAT又はGSTが運賃へ加算・控除されている場合
- 制裁、戦争危険又は航路変更に伴う高額費用が発生した場合
- 多額のDemurrage・Detentionについて負担者と発生原因が争われている場合
- 運賃差額が損害賠償、貨物留置又は貨物引渡し拒否へ発展している場合
次に確認する専門記事
| 確認したい論点 | 次に確認する記事 |
|---|---|
| 海上運賃見積書の含有範囲と総額比較 | 海上運賃の見積書で見るべきポイント |
| 保管、検査、待機、再配達等の追加費用 | 荷主が見落としやすい追加費用 |
| フォワーダーの運賃設定と請求実務 | フォワーダーと海上運賃の実務解説 |
| 販売運賃と仕入運賃の差額 | フォワーダーの運賃差益 |
| LCL混載の収益・原価構造 | 混載業務 |
| NVOCCの契約上の運送責任 | NVOCC関連の専門記事 |
| Demurrage・Detentionの負担判断 | Demurrage・Detentionを誰が負担するか |
まとめ
海上運賃は、Ocean Freight又はBase Rateだけではなく、燃料、市況、為替、繁忙期、港湾作業、CFS、書類、事前申告、コンテナ使用及び例外作業に関する複数の費用から構成されます。
基本運賃、変動サーチャージ、積地・揚地ローカルチャージ、書類費用及び条件付費用を分けて確認することが重要です。
LCLでは、W/M、Revenue Ton、Minimum Freight及びCFS Chargeを確認します。FCLでは、コンテナ種類、Ocean Freight、THC、ドレージ、Free Time及び空コンテナ返却条件を確認します。
All-inと表示されていても、全ての輸送費用を含むとは限りません。対象区間、含有費用、除外費用、有効期限及び変動サーチャージを具体的に確認する必要があります。
また、費用名が同じでも、請求主体、対象作業、課金単位及び適用時点が異なる場合があります。
海上運賃の確認では、最も安い基本運賃を選ぶのではなく、同一範囲の総額、変動条件、条件付費用及び自社が負担する可能性のあるリスクまで含めて判断することが基本です。
